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第2話

 こうして火曜日が訪れた。  なんとか一日の仕事を終えて夕暮れになった時だった。 「悪いんだけど、明日急な魔獣討伐を頼めるかな?」  そこへ俺とトールの師匠であるワーク様が入ってきた。  俺は言葉に窮した。明日は、遊園地に行く日だ。 「そ、その……」 「都合が悪いのか? だったら代わりに俺が行く」  トールが言った。トールが一緒じゃなかったら、遊園地に意味は無い。トールは半年前の約束など覚えていないのだろう。明日が自分の誕生日であることすら、きっと忘れているんだろう。 「……いや、平気です。俺が行きます」  こうして水曜日、俺は魔獣の群を討伐した。水曜日の深夜に戻ると、トールがまだ研究室にいた。せめて言葉だけでもと思って、俺はトールを見る。 「なぁ、トール」 「なんだ?」 「お誕生日、おめでとう」 「プレゼントは?」 「え」  そこまで考えていなかった俺は、焦って顔を上げる。するとこちらを見てから、ため息をついてトールが立ち上がった。 「今日はここまでで切り上げる。俺の部屋に来るか?」 「い、いく!」  これは、夜のお誘いだ。俺は嬉しくなって、俺の方がプレゼントを貰えた気になってしまった。魔導観覧車にはのりたかったが、それは来年だっていい。  こうしてトールの部屋へと行く。  寝室に直行したので、俺はいそいそと服を脱いだ。トールはローブを脱いで、シャツの首元を緩めている。二人で寝台に入ると、すぐに押し倒された。 「っ、ン……ぁ……」  いつもより――ということはないか、いつも通り性急に、あまり慣らすでもなくトールは俺に突っ込んできた。トールのものが反応しているだけでも俺は嬉しいから、多少の痛みはなんとも思わない。 「ぁ……あ……っ、んッ」  奥深くまで貫かれて、体を揺さぶられる。腰をつかまれた俺は、必死で息をした。  正直、気持ちいいかと言われるとよくわからない。でも、心は満たされる。  トールも、こうしている時だけは、誰かに俺を重ねているにしろ、ある程度は俺を見てくれていると思うからだ。 「んぅ……っ、ぁ……」  俺の感じる場所を突き上げて、トールが内部に放った。俺も淡泊な方だから、その刺激で十分で、白濁とした液を出した。  ずるりとトールが陰茎を引き抜く。俺はぐったりと体をシーツに預け、生理的な涙が浮かんだ目をトールへと向ける。ずっとここのところ疲れていたから、猛烈な眠気に襲われたけれど、それはトールも同じはずだ。 「……すぐ、帰るから」  俺はそう言うのが精一杯で、今にも瞼が落ちそうだった。  すると不意にトールが、俺の頭を撫でた。 「そうか」  トールはずるいと思う。こういうふとした時の優しさが好きすぎて、俺はどうしてもトールを嫌いになれない。愛している。

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