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第5話
「っ」
「ラピス!!」
全身が気だるい。そう思って目を開けると、真正面にトールの顔が入ってきた。
「トール、無事でよかった」
「こっちのセリフだ! 馬鹿が」
感情を露わにしているトールというのも珍しい。上半身を起こした俺を、隣からトールが抱きしめた。
「俺のために、なんてことを」
「トールが無事ならそれでいいんだよ」
「いいわけがないだろう。目を覚ました俺が、お前がいなくなったと聞いて、どれほど、どれほど心配したか――っ、この、馬鹿!」
「ほ、褒めてくれとは言わないけど、そんな……」
俺は引きつった顔で笑った。勝手に論文を使ったからフラれるかもと言う覚悟もあったが、だとしてもトールが無事ならばそれでいい。
「遊園地ならいくらでも連れていってやる」
「え?」
「――前回だって忘れていたわけじゃないんだ。ただ、お前の体調がまだ悪いんじゃないかと思って、それで変わろうとしただけで」
「トール?」
「優しく丁寧に甘く抱けばいいんだったか?」
「あっ、え、あ……」
「これからはいくらでもそうしてやる。というより、お前がいつも疲れきっている様子ですぐに寝るから俺は我慢していたんだよ!」
「えっ」
「馬鹿だなぁ、本当に。いいや、俺が馬鹿なんだ。とっくに俺は、重ねてなんていなくて、お前を愛してた。でもな、その重ねていた相手が……ルイがお前だったとはな」
「!」
「お前は俺の初恋の相手だ。お前が言ったんだろ、忘れるなと。俺は確かに約束した」
その言葉を聞いて、俺は驚いて目を見開いた。
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