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第10話

お風呂は気持ちよくて最高だった。 いつもは行為をするための場所が、久しぶりに誰にも触れられずにゆっくり体を休める目的に浸かれるなんて贅沢なんだろうか、しかも肩まで浸かれて足まで伸ばせるなんて最高じゃないか じっくり楽しんでいると脱衣所から声がし身構えた。 「下着、コンビニで買ってきたから置いておくぞ。それとバスタオルも置いておくからそれ使えな、飯はコンビニで買ってきたのあるから」 「えっ、あっありがとうございます?」 「何で疑問系なんだよ、じゃごゆっくり」 ガチャンと扉が閉まった音がしたので、浴槽から身を乗り出し浴室のドアを開けると脱衣所に男の姿は無く代わりにコンビニの袋に入った下着とバスタオルが洗濯機の上に雑に置かれていた。 「本当だ」 ドアを締め直し顔の半分までお湯に浸かる 正直感謝しかないけどまだ複雑な心境だった 俺はタダの善意があるなんて思っていない。 以前信用した人間に裏切られたことがあるからだ そいつとの汚い欲と精液と痛みに塗れた日々を思い出してしまった。 「……うっ」 思わず浴槽から顔を反らし胃液を吐いた。 お湯に吐かなくて良かったと思いながらシャワーに手を伸ばし口を濯ぐ ふざけんな、まだ囚われてるのか俺は。 「もう、あいつはいない、いない、いないっ」 今日のあいつも何を考えてるのかわからないんだ、不審な動きを見せたら刺せばいい。 「大丈夫、落ち着こう」

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