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第9話

好意には甘えるが、流石に誰のかも知れないものをなんの疑いもなく着るほど無頓着ではないので、 恐る恐る匂いをかいで大丈夫そうなやつを見繕った 下着は、…流石に洗濯していたとしても無理不潔すぎる。 男は見た目からして上背がある 試しで長袖のシャツを被ったが、予想通り袖が余ってしまって所謂萌え袖というやつになってしまった。 スウェットは女物が運良くあったのでそれを履いた。 この男のはとてもじゃないけどサイズが合わなすぎてズリ落ちてしまう。 下着が無いのは仕方ないとしてそのままスウェットを履くわけだから、そこは忘れた本人が悪いことにさせてほしい …後で捨てておこう、持ち主も可哀想だし 着替えが終わって、まず最初に思っていたことがあった。普通ならする事もしあの現場を見ていたなら当たり前なこと 「何で警察呼ばなかったんだ」 男は吸っていた煙草を灰皿に押し付けながら 「なんでって呼んだら困るだろお前」 男は、呼ばないのが当然だと言わんばかりの断定の言い方だった。 「そ…うだけど、何でわかった」 「勘だな、昔から勘だけは良いんだよ」 耳を疑った 「勘!?」 そんな得体の知れない感覚に判断を任せるのかこいつは頭が悪いのか!? 人なんて自分の利益ばかりで相手の事なんて天秤にかけて物事を考えるもんだろ そうだ、こいつだって助けたと見せかけて、俺を利用するつもりかもしれない 「まぁ、そんなことはどうでも良いだろ。 困ってんならここ住めよ。」 「…………はっ?」 益々不気味だった 俺はこんなやつにあった事がない 体を売れば金が貰えて、金があれば物が食えた 体を売っても満足な食事にはありつけなかったし 心はすり減るばかりで、金も払わず中には殴るやつだって縛るやつだっていたのに… 対価ばかり、損ばかり被ってきた 「そんな都合の良い話あるわけないだろ」 男は煙を深く履きながら灰を灰皿に落とす。 それに内心ビクつきながらいつでも逃げれるように玄関を背に意識しながら踵を軽く浮かす 「ここらへん交番近えし、あんまし治安良くねぇからなよく巡回してんぞ。 それとお前を拾った場所からそう離れてないからな、まだ彷徨いてるかもしれねぇなぁ まぁ、帰りたいならどうぞー」 と玄関のドアを指差す。 今警察にもあの男にも見つかるのはごめんだった 頭を隠せそうなものも残念ながら見つからない、今はここに泊まるのが懸命か… 「あ…、わかったよ。泊まっていく」 「おう、ほら風呂沸いたから入れ。」 「…わかった」

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