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第13話
楽しい話も良いけどちゃんと説明もしてくださいね、と一誠に注意され柊木は面の話から委員会内容の説明に移った。
「毎週金曜日はゴミ回収、掃除と草取りは……2週間に1回くらいにするか」
今まで俺1人だったからいつやるかは気分次第だったんだよね、と言いながら柊木はカレンダーにゴミ回収の日、校内清掃の日、草取りの日とそれぞれ記入していく。同じ内容を遼もカレンダーアプリに入力した。
「ゴミ袋は職員室に行けばもらえるし、清掃道具も俺が持っていくから……最後にまとめたゴミを持って行く場所だけ一緒に確認しとくか」
それだけ確認したら今日は終わりにしよう、と立ち上がった柊木の後を遼もついて行く。
「一誠先生に聞いたけど、黒崎ってこの間転校してきたばっかりなんだろ?戸惑わなかった?この学校、一般的な高校とは違うこと多いし」
「最初は……でも、俺この学校に来て良かったです」
正直今でも戸惑ったり不安になることは多いが、この学校で良かったというのも本音だった。
この学校に転入する前、自室で1人過ごしていると漠然とした不安や焦りに襲われることが何度もありその度に普通が何かもわからないまま"普通にならないと"と考えていた。
しかしいざネットで様々な学校の情報を見ても何を基準に学校を選べば良いのかよく分からなかった。
偏差値?家からの近さ?生徒数?自由な校風?部活動の多さ?自分に何が出来るかもわからないのに?
そんな時に母親が貰ってきたパンフレットの1つにあったのがこの学校だった。
「へぇ、なら良かった。担任も一誠先生だもんな。あの人優しいよな、名が体を表してるっていうか。俺が入学した年に赴任してきた人らしいけど」
「柊木先輩のクラスも担当してたんですか?」
「いや、一誠先生が俺の担任になったことはないよ。俺が1年の頃は補助員?だか何かでクラス担当は受け持ってなくて。2年に進級した時には当時の1年A組──今の黒崎のクラスの子達の担任だったし。でも美化委員と生徒会受け持ってくれてるから1年の頃からよく関わってはいるんだよね」
「生徒会?」
「ん、俺生徒会長もやってるから。この美化委員は趣味みたいな感じ」
悪いな俺の趣味に付き合わせて、と柊木が笑う。
「すごいですね……なんで2つ掛け持ってるんですか?」
「うーん……掛け持とうと思ってやってるわけじゃないんだけど、俺が入学した頃は今より環境面が整備されてなくてゴミのポイ捨てとか多かったんだよね。加えてこの学校、先生の数が少ないじゃん?だからちょっとした手伝いとして暇な時に草取りとかゴミ捨てとかやってたらいつのまにか1つの委員会みたいになっててさ。生徒会長もなんか気付いたらそうなってたというか……」
「へぇ……」
その後も柊木との話題は尽きることがなく、一誠とともに教室を訪れた時には明るかった空もゴミ捨て場に着くころにはすっかり暗くなっていた。
結局あの後一誠先生が二度目の見回りに来たんだよな……とカレンダーアプリを見ながら思い出していると軽く唯に肩を叩かれた。
『遼、明日の放課後って空いてる?』
「明日?」
『さっき廊下ですれ違った理人と、調理実習の買い物いつ行こうかって話してたんだ。遼が大丈夫なら明日の放課後4人でって話になったんだけど、どう?』
調理実習という文字に朔の顔が浮かび一瞬身体が強張ったが、どうせいつかは行くことになるんだし……と不安を振り払う。
「……ん、明日は空いてるから大丈夫。俺も一緒に行くよ」
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