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141 赤い印

                 座ったまま、手の指を絡めあって繋ぎ――ユンファ様と唇をやわく食み合う。   「……ん…♡ …ふ……」    舌を絡めて、絡めとって、絡めあって――たっぷりと、口付けばかりを楽しんだ。  唇を合わせて、唇を上も下もちゅうと吸い、ふっくらとした唇を舐め、紅を舐め取り、その甘い舌を舐め、果汁の溜まった舌の裏を舐め――歯の裏を舐め、熱くなった歯茎を舐め、舌の根に至るまで絡め取り。  くちゅ、くちゅ…ちゅ、ちゅ…と太陽の下ではあまりにも明け透けに、艶めかしい音が自然と立つ。    息継ぎに唇を離すたび、ユンファ様の息はあがっていった。――今もそのように、はぁ…はぁ…と、少し泣きそうな顔をうす赤くしている彼は、切なさをその端正な眉に宿し。   「…はぁ…ソンジュ、…もう、…そろそろ……」    媚薬の効果もあるか…――あるいはどこにも早急に触れず、ただ接吻ばかりを交わしたせいもあるか…――体が熱くなり、疼いて疼いてたまらないというふうに俺へ、なかば懇願めいてそう曖昧に求めてきたユンファ様に、俺はくすりと笑った。  白く長い首…鎖骨のくぼみの下に輝く薄紫色の宝石、繋がり、ころりと垂れた俺の牙――。   「……、…っ♡」    俺はユンファ様の、その開かれた衿元から手を忍び込ませ――するとそれだけで、ユンファ様の眉が切なく寄る。   「…なんと触り心地の良い、美しい肌だろうか……」    しっとりと手に吸い付くような肌は熱く、もうユンファ様の胸板についた乳首は服の下、凝りとなっている――熱く濡れた首筋に顔を寄せれば、それだけでひくり、彼の体が期待したように跳ねる。  俺はユンファ様の胸板を撫で回しつつ、その首筋をれー、と舌先で舐めた。――やはり甘い。   「……ん、♡ は、…」    ぞくぞく、と震えた彼の体、粟立つ首筋――唇を押し付ければ、ぴく、と……その初心な反応に、声はなく。  甘い肌は熱く熟し、熱を出しているようであった。    俺は自らの唇を掠めるようにそっと、その首筋を食む。   「……ッ♡ ん…♡ ……ん…♡」    カタカタと震えて、ときおりぴくん、…ぴくんと上体を揺らすユンファ様は、――カリカリと乳首の先を優しく引っ掻くと、ビクンッとひと際大きく体を跳ねさせた。  しかし俺はそれを続けず、ユンファ様の胸板をまったりと回し揉む。――喉仏にちゅっと口付けてから、おもむろに唇と舌を下へすべらせ――鎖骨の中央のくぼみを、舌先でくすぐる。   「……ぁ…♡」    悩ましい小さな声をもらしたのち、ユンファ様は泣きそうな声で俺に。   「ソンジュ、…ソンジュ…お願い、焦らさないで……」   「……ふ…、……」    俺はそれを鼻で笑うだけ、ユンファ様の愛しい瞳に口付けるように、鎖骨のくぼみの下にある薄紫色に接吻を落とし――それからくっきりと浮いた、硬い鎖骨を唇で食む。  そうしながら服の下、ユンファ様のきゅうと集まる乳首の周りを指先で丸くなぞり、は…っと息を呑むユンファ様の首筋へ戻る俺は――彼の首に、強く吸い付く。  そうしてぢゅっと吸い付けば…ユンファ様の、雪白の肌に浮かんだのは、歪な丸の血痣(ちあざ)――「んっ♡」と小さく甘い声をもらした彼、やや下り、もう一つ赤を、…もう一つ、もう一つと、いくつも血痣を。   「……ソン、ジュ…、は…っ♡ ソンジュ、なに、何をしているの…?」   「…ふふ…、血痣をつけておりまする…――ユンファは俺のつがいなのだと、俺が、貴方様を愛したのだという証に……」   「………、…」    するとユンファ様は、吐息でばかり「そんな…そんな…」と言葉を失っている。――顔を見れば斜に伏せられたその端正な顔、かあっとはにかみ赤の濃くなった頬、それでいて幸福そうな恍惚の横顔。  やや反らされたその雪白の首筋には、いくつもの歪な赤がくっきりと映えて浮かび、美しく――それでいて耽美な官能を唆る眺めがしかと、太陽光に照らし出されている。   「…こうすればもはや、誰が見てもユンファは、俺にたっぷりと愛されて抱かれ――すなわち、貴方様が俺のものであると、誰しもが理解する…、この血痣は、そのような意味を持つ印なのでございます」   「……、はぁ…なんだか少し、恥ずかしい……」    そうはにかむユンファ様は、それでいてその赤い唇の端をきゅっと上げて、満更でもなさそうに笑った。        

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