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11 大寝坊の役立たず

ベッドも布団もふかふかで、僕はすぐに眠りに落ちる。 初夜ってこんな感じでいいのかな… 寝室も別々だし。 でも、僕がテオドール様なら自分のベッドに、好きでもない男Ωがいたら、嫌かもしれない。 僕はシェリルにはなれないんだから… 目が覚めると、あたりはすっかり明るかった。 えっ!?何時!? 僕はベッドから跳ね起きて、時計を確認する。 10時… テオドール様はとっくに騎士団のお仕事に向かわれただろう。 お見送りもできないなんて…、妻失格では…? 僕が自室のドアを開けると、すぐそこにいたセバスさんと目があった。 「おはようございます」 セバスさんが頭を下げた。 「あ、お、おはようございます… すみません、寝坊してしまって…」 「いえ、お疲れだったのでしょう。 ぐっすり眠れたのでしたら良かったです。 お食事になさいますか?」 セバスさんは僕の寝坊を気にした様子もなく、そう言った。 怒られないのも逆に辛い。 「朝ごはん、頂きます。 あの…、テオドール様は…」 セバスさんはふっと目を細めると「旦那様は騎士団の錬成に向かわれました。いつも、7時には向かっております」と言って、僕をダイニングルームへ促した。 「し、7時…」 騎士団ってそんなに早くからやってるの…? 10時起きなんてしてしまった僕を殴りたい。 でも、明日からそれに間に合うように起きれるかな… そんなモヤモヤした気持ちは、朝ごはんのおいしさに消し飛んでしまった。 朝からこんなに充実したご飯を食べられるなんて…、侯爵家様様だ… シェリルが知ったら、悔しがりそうだけど。 朝ごはんを食べ終え、傍に立つセバスさんに声をかけた。 「僕って、何をするといいですか?」 「旦那様からは、お屋敷に慣れるまでは自由に過ごすように言われております」 「自由に…」 そうは言っても、こんなによくしてもらってるのに、僕だけ好きに過ごすなんて無理だ。 子爵家では、使用人を雇えなかった家事は僕がしていたし、嫁ぐ前は兄の仕事を手伝う気だったからその勉強もしていたし… 割と忙しくしていたので、暇を過ごすことができない。 「あの、僕、家事とか雑用とかできますけど」 僕がそう言うと 「この屋敷ではその道のプロたちが働いておりますので、シエル様にお任せすることはないです」 と、セバスさんに微笑まれた。 確かに、すごい数の使用人さんがいる。 僕なんか足手纏いだろう。 「で、では…、よろしければ、領地とかフランツ侯爵家の歴史とか…、お勉強させて欲しいです」 僕がそう言うと、セバスさんは驚かれて 「シエル様は大変立派な奥様ですね。 旦那様から許可を取れましたら、私めがお教えいたしましょう」 と言ってくれた。 テオドール様と比べたら、全然立派なんかじゃないけれど、少しでもフランツ侯爵家の力になれたら、僕は安心してここにいられる気がする。 午前いっぱいは、テオドール様に確認を取る術がないので、僕は屋敷の中を探索した。 お昼の時間、テオドール様が帰宅された。 忙しいとお聞きしてきたけれど、結構頻繁に帰宅している気もする。 「昼食は旦那様とご一緒にとりますか?」 と、セバスさんに聞かれたので 「はい!あの、お勉強のことも聞いてみます」 と僕は答えた。

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