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12 領地について教えてください
お昼、テオドール様に会うなり、僕は今朝の非礼を謝罪した。
「テオドール様がお仕事に行く時間に寝ておりました。申し訳ございません」
テオドール様は気にした様子もなく、むしろ
「俺が起きる時間は使用人もほとんど寝ている。
それに、仕事といっても、自主鍛錬のために皆より早く出ているだけだ。
シエルは俺に合わせる必要はない」
と、言ってくださった。
僕が「でも…」とか下がると、彼は
「シエルはうちで自由に過ごしてくれれば良い。
何も気にしないでくれ」と遮った。
テオドール様に他意がないのは分かるけど、まるでフランツ公爵家では、僕は役立たずだから大人しくしていろと言われているみたいで悲しくなる。
「その…、自由に過ごすと言うところですが、
セバスさんからフランツ公爵家について色々とお勉強をさせて頂きたいのです」
「セバスから…?」
僕が提案すると、テオドール様は一瞬難しい顔をした。
やっぱりよそ者の僕に、お家のことを教えるのは不安だろうか…
「子爵家でも、少し会計の仕事なんかも手伝っていて、あまり役に立たないかもしれませんが、少しはお役に立てると思うんです」
僕が不安な顔で見上げていると、テオドール様は困ったように笑って言った。
「そうだな。夫人が家のことをできれば、俺も安心して騎士団の遠征にも行けるだろう。
シエルがやりたいならやるといい。
俺が直々に教えられないのは惜しいが」
と、許可を出してくれた。
家のことを教える上で、侯爵が監視できないのは不安要素なのかもしれない。
でも、僕には公爵家の機密情報を教えるような相手もいないから安心して欲しい。
昼食を食べ終えたテオドール様が
「今日は新婚を理由に昼も帰宅したが、明日からは戻れないと思う。
夜も遅くなるから、夕食は先にとって構わない。
なにかあったら遠慮せずにセバスに言うように。
俺を呼んでもらっても構わないが」
と、早口で説明してくれた。
やっぱり、忙しい中、時間をとってくれたんだ…
あまり迷惑をかけないようにしないと…
そもそも、僕なんかを受け入れてもらっているだけで迷惑をかけているのに…
「お気遣いありがとうございます。
僕は結構逞しいので大丈夫ですよ!
お仕事、頑張ってください」
と、彼を送り出した。
テオドール様はやはり、少し何か言いたそうなお顔をしている。
が、「ああ、いってくる」と言って馬を走らせて颯爽と行ってしまった。
そういえば僕は乗馬も下手だった。
どうにも馬に舐められてしまう。
振り返るとセバスさんがいた。
「テオドール様に許可を頂いたので、セバスさんがお時間のある時に教えていただけると嬉しいです」
と、僕が声をかけると
「それは良かったです。
それでは、お部屋に戻られましたら早速お教えしましょう。
なにせ、侯爵家の領地は広大ですので」
とセバスさんは笑顔で言った。
広大…
「お、お手柔らかに…」
「勿論です」
午後いっぱいは、お勉強タイムとなった。
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