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14 雷雨の夜

あくる日の夜、寝る前の日課の読書(テオドール様が僕のために流行りの小説を買ってくれた)をしていると、窓の外がピカッと光った気がした。 嫌な予感に体を強張らせていると、数秒してゴロゴロと空が鳴った。 雷だ… また窓の外が光った途端、僕は頭を抱えて伏せた。 地面がバリバリと響くような大きな音が鳴る。 それに合わせて僕は「ひぃぃぃぃ」と情けない声を出した。 それを聞きつけてか、セバスさんがドアをノックした。 「ど、どうぞ」 そう言うと、血相を変えたセバスさんが僕に駆け寄ってきた。 「いかがなさいました!?」 「あ、す、すみません。 僕、雷が苦手で…、ギャアっ」 また雷が光って音が鳴った。 どんどん近づいてきている。 「どうしましょう…、旦那様はまだ戻られませんし…」 セバスさんが困ったように言った。 「あ、あの、ホットワインを1杯頂けないでしょうか。 酩酊してしまえばそのうち眠れるので」 「え、ええ。すぐに準備いたしましょう」 それで、ワインを1杯飲んだわけだけど…、僕が経験した中で過去最大の大嵐の様で、酔っていても雷から意識を逸らすことが出来ない。 布団をかぶって耐えているが、地面が揺れるほどの大きな雷がどこかに落ちて、僕は再び「うわぁぁぁ」と情けない声を上げた。 「シエル様、大丈夫でございますか?」 いつの間にかすぐ横に来ていたセバスさんが、布団越しに僕の背中を摩った。 「セバスさん…、一緒に寝るなんてことは…」 「旦那様の奥様とそんなことは出来ませんね」 「そ、そうですよね…、じゃあ、もう1杯ワインを」 「…、かしこまりました」と、セバスさんは部屋を出ていかれた。 僕が1杯目を飲んでから1時間が経過していて、こんな時間までセバスさんを付き合わせてしまって申し訳ない。 数分して、セバスさんがワインを持ってきてくれた。 「セバスさん、流石にこれを飲んだら眠れる気がしますので、あとは休んでください」 「左様ですか…。 旦那様も戻られましたし、お言葉に甘えて休ませて頂きましょう」 「遅い時間まで申し訳ございません。 テオドール様、この天気の中、無事帰られたんですね」 「ええ。まだ仕事があるようで湯汲みの後は書斎におられます」 「書斎に…」 「ええ。旦那様は書斎に」と、セバスさんが意味深な笑みを浮かべて繰り返した。 「それでは、おやすみなさいませ」と、セバスさんが頭を下げた。 「いろいろとありがとうございました。 おやすみなさい」 ワインを片手に僕も挨拶を返した。 セバスさんが退室したのを確認して、ワインをグビっと飲んだ。 窓の外ではまだ雷鳴が轟いている。 そこから気分がふわふわしてきて…、あとは記憶がない。

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