14 / 59
14 雷雨の夜
あくる日の夜、寝る前の日課の読書(テオドール様が僕のために流行りの小説を買ってくれた)をしていると、窓の外がピカッと光った気がした。
嫌な予感に体を強張らせていると、数秒してゴロゴロと空が鳴った。
雷だ…
また窓の外が光った途端、僕は頭を抱えて伏せた。
地面がバリバリと響くような大きな音が鳴る。
それに合わせて僕は「ひぃぃぃぃ」と情けない声を出した。
それを聞きつけてか、セバスさんがドアをノックした。
「ど、どうぞ」
そう言うと、血相を変えたセバスさんが僕に駆け寄ってきた。
「いかがなさいました!?」
「あ、す、すみません。
僕、雷が苦手で…、ギャアっ」
また雷が光って音が鳴った。
どんどん近づいてきている。
「どうしましょう…、旦那様はまだ戻られませんし…」
セバスさんが困ったように言った。
「あ、あの、ホットワインを1杯頂けないでしょうか。
酩酊してしまえばそのうち眠れるので」
「え、ええ。すぐに準備いたしましょう」
それで、ワインを1杯飲んだわけだけど…、僕が経験した中で過去最大の大嵐の様で、酔っていても雷から意識を逸らすことが出来ない。
布団をかぶって耐えているが、地面が揺れるほどの大きな雷がどこかに落ちて、僕は再び「うわぁぁぁ」と情けない声を上げた。
「シエル様、大丈夫でございますか?」
いつの間にかすぐ横に来ていたセバスさんが、布団越しに僕の背中を摩った。
「セバスさん…、一緒に寝るなんてことは…」
「旦那様の奥様とそんなことは出来ませんね」
「そ、そうですよね…、じゃあ、もう1杯ワインを」
「…、かしこまりました」と、セバスさんは部屋を出ていかれた。
僕が1杯目を飲んでから1時間が経過していて、こんな時間までセバスさんを付き合わせてしまって申し訳ない。
数分して、セバスさんがワインを持ってきてくれた。
「セバスさん、流石にこれを飲んだら眠れる気がしますので、あとは休んでください」
「左様ですか…。
旦那様も戻られましたし、お言葉に甘えて休ませて頂きましょう」
「遅い時間まで申し訳ございません。
テオドール様、この天気の中、無事帰られたんですね」
「ええ。まだ仕事があるようで湯汲みの後は書斎におられます」
「書斎に…」
「ええ。旦那様は書斎に」と、セバスさんが意味深な笑みを浮かべて繰り返した。
「それでは、おやすみなさいませ」と、セバスさんが頭を下げた。
「いろいろとありがとうございました。
おやすみなさい」
ワインを片手に僕も挨拶を返した。
セバスさんが退室したのを確認して、ワインをグビっと飲んだ。
窓の外ではまだ雷鳴が轟いている。
そこから気分がふわふわしてきて…、あとは記憶がない。
ともだちにシェアしよう!

