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31 ヒート明けと孤独
それから数日した朝、すっきりした気分で目が覚めた。
ヒートが終わったようで、僕はホッと胸をなでおろす。
テオドール様をはじめ、お屋敷中の人には沢山迷惑をかけてしまったから、体はすっきりだけど心は重い。
強烈な空腹感を覚え、僕はベルを鳴らした。
セバスさんが飛んでやって来た。
「シエル様!?どうなさいました!?」
「あ、すみません。驚かせてしまって…
ヒートが終わったので、良ければ朝食を頂けるかなと思いまして…」
「勿論です。
お屋敷にΩがいないもので…、1週間もお食事をとらないシエル様に、皆が驚き心配しておりました」
「あ…、ちゃんと説明してなくて申し訳ございません」
テオドール様もマギーもαだから、Ωの使用人はいないのだろう。
万が一、使用人にヒートが来て、番事故が起こるのを防ぐために、そうなっているお家は多い。
だから、きっとセバスさんが2日以上1食も食べない僕を心配して、テオドール様を呼んでくださったんだろう。
ヒート中のΩが絶食してしまうことは、よくあることだけど。
「あの…、テオドール様は?」
僕が不安な気持ちを抱きながら聞くと、セバスさんが
「書斎にいらっしゃいますよ。会われますか?」
と穏やかにほほ笑んだ。
すぐにでも謝らなきゃいけないだろう。
けれど、僕は顔を合わせる勇気がなかった。
「αに会ったら、ぶり返してしまうかもしれないので、今日は遠慮しておきます」
「おや…、そうですか。
旦那様も心配しておりましたので、お早めにお元気な姿を見せてくださいね」
セバスさんはそう言うと「お食事を運んでまいります」と、退室した。
テオドール様は遠征には戻らず、僕のヒートが明けるまで屋敷にいてくださったんだ…
その優しさが嬉しいけれど、ずっと迷惑をかけているのだと思うと苦しくなった。
その日は、僕がヒートから明けたと知ったからか、午後から出勤したらしい。
お昼や夕食時に顔を合わせるものだと思っていたから、僕は拍子抜けした。
そりゃ会うのは気まずかったけれど、いざ、会わないとなると少し寂しい気もする…、と思うのは流石に我儘かな。
夜遅くまで起きていたけれど、なかなか彼は帰ってこなくて、僕はヒート明けで体力が落ちてしまったからか日付を超える前に我慢できずに眠ってしまった。
かかさずやっていた日課だったのに…
でも、明日には会えるはずだと信じて僕は眠りについた。
翌日、セバスさんから「旦那様は予定を変更して遠征に戻られたようです」と申し訳なさそうに言われた。
「そうですか…、大切な遠征とおっしゃってあしたもんね!
ご無事で戻られると良いです」
仕方なく、僕はそう言った。
今日で、遠征初日から7日目だ。
昨日から向かったということは、難航しているのかもしれない。
もしもそれが、僕がヒートを起こしてテオドール様を戻らせてしまったせいなら、申し訳なさすぎてなおさら顔が見られないな…
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