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34 久々に見る旦那様

「あの、マギー?」 仕立て屋を帰し、マギーとお茶を飲んでいた。 「何かしら。やっぱり衣装きめちゃう?」 「いや、その話ではなく…、 僕がテオドール様に会いに王宮に行くことはできるのかな?」 「あら!素敵じゃない! 殿下もシエルに会いたがってたわよ。 今からでも行く?」 「い、いや!大丈夫!」 すぐにでも立ち上がりそうなマギーを止めて、僕は王宮に行くことを考える。 迷惑をかけてしまう事は重々承知だ。 でも、こうでもしないと話せない気がする。 いつか、決心がついたら向かってみるのもありなのかな。 その夜、寝付けずにごろごろしていると、トイレに行きたくなったので、 暗闇の中、灯りを持って恐々と廊下を歩く。 とっくに日付は超えていて、テオドール様はちゃんと布団に入っているだろうかと不安になった。 αは体が丈夫で、体力が桁外れだとは聞くけれど、睡眠は取らないに越した事はないだろう。 「誰だ?」 と急に声をかけられて、僕は「ひゃあ!?」と声を出してその場に座り込んでしまった。 廊下の先から現れたのはテオドール様だった。 彼は僕を見ると、慌てて駆け寄ってきた。 「驚かせてしまったか?すまない」 久々のテオドール様は、暗いせいか少しやつれて見えた。 「あ、申し訳ございません。大丈夫です」 僕は立ちあがろうとしたが、腰が抜けてしまったみたいで、体が言うことを聞かなかった。 「あ、えっと、そのうち立てると思うので、テオドール様はお部屋に…」 僕がそう言いかけた時、テオドール様が僕を抱き上げた。 「え、わっ!?」 僕は慌てて彼にしがみつく。 久々のテオドール様の香りと体温、逞しい腕や胸に僕はじんわりと心が温かくなった。 「怖がりのシエルをこんなところに置いていけないだろう。このまま部屋に連れて行こう。 なぜこんなところにいたんだ?」 そこで僕は尿意を思い出した。驚いた拍子に漏らさなくて良かった… 「あ、その…、僕はお手洗いに…」 僕がそう言うと、彼は「そういうことなら連れて行こう」と、お手洗いの方に向かって歩き始めた。 ヒィ…、成人にもなって人にトイレに連れてってもらうなんて恥ずかしい… 中までついていくか?と聞かれたけれど、そんな羞恥プレイをされたら、排尿し切る前に舌を噛み切って死んでしまうだろう。 丁重にお断りして、なんとか1人で便器の前まで到達することができた。 

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