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第38話 届いた求婚

 突然の星の国からの来訪。しかも今回その使者は宰相だという。  その事実にケトメの王宮は騒然とする。  そして伝えられた内容に、更に驚きは大きくなる。  すなわち、国王ハーデスからのセティへの正式な求婚。  半年後、ハーデス自身がセティを迎えに来ると、星の国の宰相は述べる。国王ハーデスの気持ちをどうか受け止めて欲しいと。  そして渡された親書。それには、宰相が述べたと同じ事が、丁寧に認められていた。勿論、ハーデス自身の親筆だ。 「宰相殿、お返事は後ほどさせていただく。ひとまず、ゆるりと疲れをおとり下され」  宰相は、疲れてはおらぬがと思ったが、返事をもらうまでゆるりと過ごすことにする。どうか良い返事をと思いながら。  セティは最初驚いたものの、今は感激している。ハーデスは約束を守ってくれた。しかも思いのほか早かった。もう少し時間がかかると思っていた。  星の国からの帰国後、ハーデスの気持ちを疑ったことはないが、不安はあった。会えないことからの不安。  感激したセティは、当然返事は受諾だと思っている。父は、受諾の返書を渡してくれると。  セティを王子の宮に戻した後、四人での話し合いになる。セティには聞かせられない。 「しかし驚いたのう、宰相を遣わすとは――」  父国王が、半ば嘆息するように言う。  最初は本当に宰相なのかと疑ったが、アティスとメニ候が星の国で面識があり、その疑いは解けた。   「使者が宰相ならば、反対勢力は抑えたという事でしょうか……」 「母上、それは分かりません。実際どこまでハーデス殿が掌握しているかは不明です」  苦り切った表情のウシルスが言う。実際、ウシルスは心底苦り切っている。今更、求婚などと。セティを我が妃にするべく、今からが正念場、そう思っている矢先なのに。  これは、何が何でも家族全員を反対に傾けなければならない。 「ウシルスの言う通り、あちらの事情は分からぬが実情だからな」 「はい、そのような所へセティをやるわけにはいきません。我らの目の届かぬ国なのです」 「それは、わたくしも思うこと。余りにも未知な国ですから……不安は大きい」  ウシルスの思惑通り、母は反対に傾きかけている。    しばらく沈黙が続いた。国王が三人の顔を見渡しながら、沈黙を破る。 「で、どう返事するかじゃ。宰相が親筆の親書を携えてきたのじゃ。失礼な応対は出来ぬからな」 「丁重にお断り申し上げましょう。仮に、心からセティを望むなら再度求婚されるでしょう。一度の断りで、はいそうですかとなるなら、それまでだと、わたくしは考えます」 「うん……確かにウシルスの言うのも最もとは思うが……ハーデス殿の本気具合は分かるな」 「わたくしは、断ればおそらくはそれきりになると思っております」 「そこまでの気持ちはないと」 「はい」 「そうじゃな……もし再度あるならばその時は考えねばならぬが、此度は断るか。王妃とアティスそれで良いか?」 「はい、よろしゅうございます」  王妃、そしてアティスも同意し、結論となる。  星の国の宰相には、国王が直接返答する。  言葉丁寧に伝えるが、要するに内容は、未知の国へ大事な王子をやるわけにはいかないということだ。  宰相は、聞かされた返事に気落ちした。簡単に受諾されるとは、さすがに思ってはいなかった。何らかの条件は付けらえると。しかし、単に断りの返事とは……。  星の国の宰相は、悄然と帰国の途に就いた。  星の国の宰相への返事の内容を知ったセティは衝撃を受けた。  どうしてだと言い募るセティに、国王は静かに諭す。ハーデスの本気具合を知りたいと。  しかし、セティには分かった。皆、ハーデスの求婚に対して半信半疑でいると。  それはとても悲しかった。何故、信じてくれないのだろうと思うのだ。今からでも、宰相を止めて、返事を変えたい。しかし、それは叶わぬこと。  ハーデスは、もう一度求婚してくれるだろうか……セティの胸は不安で一杯になった。

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