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第14話

急にどたばたと騒がしくなったと思うと、襖が開き、びっくりして隣を見ると社長が俺の腕を掴んでいて、さらに驚いた。 「彩奈さん、すみません。あいにく私はあなたと結婚できません。これを愛していますので。父さん、私の相手について心配して頂いているのなら結構です。では、失礼します」 少し驚いていた会長がふっと笑う。 「面白いね。……魅弥、今夜の約束は無しでいいよ。」 社長は見向きもせずに、俺の腕を引っ張り、車へと促した。 「社長、どういうことか説明していただけますね。断るにしても、もっと良い方法があったでしょう。」 「あれ以外の方法なら、もっと長引いただろう。それに、俺がお前を好きだと思わせておけば見合いもそうそう持ってはこない。」 別に、愛しているとか言われて嬉しかったわけじゃない。 胸の痛みだって気のせいだから。 額を手で押さえると、心が落ち着くような気がした。 「分かりました。それにしても、事前に何かおっしゃって欲しかったですね。」 「それで賛成されるとはさすがに思わない。それより、今夜の約束ってなんだったんだ?親父の仕事も受け持っていたのか?」 細かいところまでなんで覚えてんだよ。 「少し、仕事のことで相談があって。たまに、話を聞いてもらってるんです。父さん、ですから」 父さんなんて俺がいうのが久しぶりだからか、眉を寄せているのが少しかわいい。 釈然としないようだけど、一応は納得したのか、そうかと頷き、俺の頭をぽんぽんたたいてきた。 「別に俺に相談してもいいんだぞ。兄さん、だからな。」 うわぁ。 これ絶対顔赤くなってるし……。

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