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第33話

そっと背中に手を回されて抱きしめられる。 少し早くなる鼓動が煩わしい。 眼の前の肩に涙をこぼさないよう少し乱暴に拭った。 指が眼に触れたのかまた少し涙が出てきた。 「社長のせいでは、ありません。ありがとうございました。本当に大丈夫です。」 「なあ、魅弥。泣くなら大声で泣いてくれ。無理に止めようとしなくていい。俺の服も汚していいから。」 「いえ、本当に大丈夫です。」 「大丈夫じゃない。俺しかいないから!泣け。」 あなたに1番見られたくないんだと少し笑みをこぼすと涙がつられたように出て、もう止まらなくなった。 社長に身体をあずけ、必死に嗚咽を殺した。 ずっと背中を撫でてくれる手が優しくて暖かくて邪な感情を抱いている自分が辛くなった。

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