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第34話

朝、いつも通り目覚めベッドヘッドを探る。 だが、目当てのスマホは見つからず身体を起こした。 まわりを見渡して、あげそうになった声を急いで止めた。 昨日、あのまま寝たのだろう。 ここは社長の寝室で、隣には社長が寝ていた。 社長を起こさないようにそっと立ち上がり、荷物を持って自分の部屋へと向かう。 自分の部屋について息をついた。 ワンフロア使っている社長の部屋は広すぎて落ち着かない。 昨日は風呂さえ入っていないことを思い出して、急いで浴室へ向かった。 自分の身体を洗いながら、少しだけ触れられた暖かく大きな手を思い出した。 俺みたいに細くて女っぽい手じゃなくて、会長みたいに冷たい手でもない。 「だめだ、考えるな」 頭を振って、くだらない想像をかき消した。 二度と触れられることはないし、触れられないようにしなければいけない。 でも、たまに頭を叩かれるくらいならいいかな、なんて。

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