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第37話
「どこか行きたい場所はあるか?」
と言われても。
急な事で考える暇もなかったし、そもそもそんなに行きたいところというのはない。
「社長の行きたいところで。」
「俺の行きたいところとは。まるでデートみたいな言い方だな。」
「別にそんなこと考えてません!社長と私は兄弟で男ですし!」
デートなんて言われて少し焦った。
「だが、魅弥は親父と付き合っているのだろう?兄弟なことも、男同士だということもさして問題ないだろう」
社長には会長と付き合っていると言ったのだと思い出し、はっとした。
でも、社長が俺が気にしていたことを問題ないと言いきってくれたことはとても嬉しかった。
変になってしまった空気を変えたくて明るい声を出す。
「それで、どちらに向かわれるのですか?」
「遊園地に行こうか。昔、好きだっただろう。」
遊園地が好きだったのは、まだ小学校低学年の時だ。
今行っても、好きかどうかわからない。
でも、少なくとも俺は社長とならどこだって楽しいから。
「ありがとうございます。とても嬉しいです。」
「魅弥は、笑顔がきれいだ。普段からもっと笑ったらどうだ。」
急にそんなことを言われても困る。
曖昧に頷き、窓の外を眺めた。
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