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第39話

「そのまま出てきたりするなよ」 仕方なく着替え始めた。 少しぶかっとしたTシャツが落ち着かない。 見せてみろという声にカーテンを少し開けた。 「変じゃないですか?私にはこういう服装は似合いませんし。」 「いや、そんなことはない。似合っている。」 手を掴まれ店から出される。 スーツは置いたままだし、代金も払っていない。 焦って社長に声をかけるとしれっと返された。 「友人の店だ。服は後日買いに行こうか。」 それは、次の約束なのか。 今日も、渋々なんていう素振りを見せながらも、内心どきどきして楽しくて嬉しい。 でも、こんなことをしたらもっと社長のことが好きになってしまうから。 社長と一緒にいられる未来を想像してしまうから。 引かれていた手をさっと離した。

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