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第51話

「これは…時計とネクタイか。ありがとう、ここのブランドは気にいっているんだ。明日からつけるよ」 「いえ、あの…全然捨ててもらってもいいですし…」 「ははは、捨てるわけがないだろう。とてもうれしいよ。」 なぜか目が合わせずらい。 「あの、そろそろ帰ります。お疲れさまでした」 「もう帰るのか。泊って行ったらどうだ?」 俺の部屋はこの部屋の真下だから泊るメリットはないし、正直社長を意識しすぎて眠れる気がしない。 「いえ、着替えもありませんし。帰らせていただきます」 「着替えなら心配するな。俺のを着たらいい。もし、大きすぎるようなら新しいのを作らせよう。」 「では…お願いします……」 断る理由をもう少し選んだ方がよかったな。 リビングに入ったときピロンと音がした。 急いでスマホを確認すると会長からだった。 今から来てだけの簡単な文。 でも、断れない。 いつもの倍の時間、倍の苦痛が待ってるから。 「社長、すみません。急用ができましたので、帰らせていただきます。」 「こんな時間に何の用だ?」 「バートと…少し飲みに行ってきます」 少しあやしいかと、社長の顔を見ると眉を寄せてはいたが、楽しんで来いと見送ってくれた。

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