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第63話

よしっと頬をたたき、いつものスーツに着替えた。 顔を洗って、朝食を食べるとだんだん仕事をするモードに切り替わっていく気がする。 部屋のドアを開けるといつもの自分になってる……たぶん。 社長の部屋をノックすると、すぐに社長が出てきた。 少し緊張して喋れないまま、駐車場へと歩いた。 「俺が運転しよう」 「いえ、あの…前回は社長にしてもらったので……。私が運転します」 この変な空気を何とかしたい…… 会社に入ろうとすると、肩を叩かれた。 さっと振り返ると、そこに居たのはバートだ。 「魅弥に何か話があるんだろう。俺は先に行ってるが、少し遅れても構わない」 「え?いや、あの」 ”魅弥!おはよう。” ハグされ頬へのキスをされる。 俺からもして、そっと身体を離した。 ”バート!こんな時間に来て、何してるんだ?” ”空いてる時間が朝しかなかったから。魅弥の連絡先聞きに来たんだ。持っていたものは届かなくなってる” 確かにイギリスから帰ってきたあと、携帯をスマホに変えた。 ”教えるよ。ラインでいいか?” ”ああ。こんな時間にきてごめんね?はやく魅弥と話したかったんだ” 先に謝られたら怒れない。 ”今回はいいけど、これからはやめろよ?うちの社長に迷惑をかけることになる” ”あっ、神奈氏に伝えといてくれる?日本人ユーザー向けにオンセンを作る事を受け入れるって。 正式にはまた連絡とるけど。じゃあね、魅弥” また、頬にキスを落とされバートは帰っていった。 嵐のように、きて去っていくやつだと呆然と見送った。

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