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第70話
帰りの車の中で、バートが肩を叩いてきた。
「魅弥は神奈氏が好きなの?」
「え?いや、何言ってるんだ、バート。男同士でそんなことあるわけないだろう。見ただろ?社長には彼女がいるし」
華弥にばれるのは恥ずかしいだけだったけれど、バートに気づかれるとなるとだめだ。
そんなことをする奴じゃないと思っているけどそれをネタにされたり。
ゲイに偏見があるのならば今決まっている契約がすべて白紙になる可能性だってある。
「本当か?」
「当たり前だ。変な疑いをかけないでくれ」
「ははは、ごめんな?さっき神奈氏を見てた魅弥が泣きそうだったから」
泣きそうって……
そんなに、分かりやすかったのだろうか。
家の前まで送ってもらい、車の開いた窓をはさんで、向かい合った。
「今日はありがとう、たのしかったよ。また、誘ってくれ」
「もちろん。……ねぇ、悩みがあるならいつでも言ってね。俺はずっと魅弥の味方だから」
「ありがとう」
最後に頬にキスを落とされてバートと別れた。
されないようにするって社長と約束したのに、避けられなかったな。
でもまぁ、俺のことはどうでもいいんだろうからいいか。
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