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第71話
「社長、朝です。起きてください」
のばされた腕に気づいた瞬間、一瞬気持ち悪さを感じて避けてしまった。
避けたくなんて、なかったのに。
「ん?どうした?」
「いえ、すみません。何でもありません」
そうかという声は特になんの感情も含んでなくて、避けておいてなんだけれど、悲しかった。
仕事中、いつも通りの社長に反して俺だけが意識している。
普通にと思うほど普通がわからない。
「魅弥、次の会議の資料を取ってきてくれ」
「はい」
資料を全て挟んでいるファイルから社長に渡す。
「これは、さっきのものじゃないか?」
「えっ、あ、すみません!」
「魅弥はわかりやすいな。何があった?」
あなたのせいでしょうとはさすがに言えず、目をそらした。
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