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第79話

「おはようございます」 「おはよう。スーツ以外もいいな」 頭を撫でられ、顔が赤くなるのが分かる。 「何処へ行きたいか決まったか?」 「美術館で」 以前、絵を見るのが好きだと言っていた。 俺は絵には興味ないけど、楽しそうな社長を見れたら充分楽しめる。 「そうか。魅弥、今日は敬語を使うなよ?」 なんで、そんなに敬語使われるのが嫌なんだ? そんなじっと見つめられると言いづらい。 「わ、分かった。兄さん」 「兄さんもいいが……玻璃って呼んでくれないのか?」 こういうのは恥ずかしがった方が恥ずかしいよな。 「玻璃!早く行くぞ!」 社長はずっと笑っていたけど無視して、車に乗り込んだ。 正直、絵はどれがいいものかとか分からない。 俺でもかけるんじゃないかってくらい、変なのとかあるし。 でも、社長の綺麗な顔が見れるから、美術館は楽しい。 本当に楽しそうに、時に儚げに感情移入しながら見ていく横顔は本当に美しい。 社長がこんなに楽しそうに見るんだからと、俺もまた絵を見るがやっぱり理解できなかった。

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