81 / 123

第81話

「あの、玻璃さん?ですよね。こんなところで会うなんて。嬉しいです」 かわいい女の人の声にはっと我に返った。 恥ずかしい。 「みゆ?」 これは……席を外した方がいいのだろうか。 「玻璃さんもこういう店に来るんですね!」 「ああ。今日は連れがいるから」 「あの!私も今日友達と2人で来てるんです。もし良かったら、そちらのお友達もご一緒にどこか行きませんか?」 ああ、この子は社長のことが好きなんだな。 それに、当たり前だけど友達にしか見えないっていうの辛い。 傍から見たら、完全に俺は邪魔だよな。 「ごめん、玻璃。用事思い出したから帰るよ」 社長の返事も聞かず、店の外に急いで出た。 少しだけ、ほんの少しだけ引き止められること期待してたのにな。 駅についたら、ちょうど電車は行ってしまったあとで。 つくづくついてない。 やっと来た電車に乗り込んで最寄り駅で降りる。 「魅弥!こんなとこで会うなんて珍しいね!」 「バート?」 たまたま会うっていうのが多い日なんだろうか。 「魅弥、どうしたの?泣きそうな顔してるけど……」 「そんな顔、してない」 バートはハイハイとだけ言って、俺をバートの家に連れていってくれた。

ともだちにシェアしよう!