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第81話
「あの、玻璃さん?ですよね。こんなところで会うなんて。嬉しいです」
かわいい女の人の声にはっと我に返った。
恥ずかしい。
「みゆ?」
これは……席を外した方がいいのだろうか。
「玻璃さんもこういう店に来るんですね!」
「ああ。今日は連れがいるから」
「あの!私も今日友達と2人で来てるんです。もし良かったら、そちらのお友達もご一緒にどこか行きませんか?」
ああ、この子は社長のことが好きなんだな。
それに、当たり前だけど友達にしか見えないっていうの辛い。
傍から見たら、完全に俺は邪魔だよな。
「ごめん、玻璃。用事思い出したから帰るよ」
社長の返事も聞かず、店の外に急いで出た。
少しだけ、ほんの少しだけ引き止められること期待してたのにな。
駅についたら、ちょうど電車は行ってしまったあとで。
つくづくついてない。
やっと来た電車に乗り込んで最寄り駅で降りる。
「魅弥!こんなとこで会うなんて珍しいね!」
「バート?」
たまたま会うっていうのが多い日なんだろうか。
「魅弥、どうしたの?泣きそうな顔してるけど……」
「そんな顔、してない」
バートはハイハイとだけ言って、俺をバートの家に連れていってくれた。
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