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第94話

昼の休憩時間に見たスマホには、バートからのメッセージが届いていた。 『今日もうち泊まる?泊まるならちゃんと、神奈氏に言ってから来なよ』 泊まらせてもらいたいと思っていたからほっとした。 ちゃんと言うと返事して、社員食堂のカツ丼をかきこんだ。 会社を出てバートの家に向かっていると、後ろからこえをかけられた。 「あの!玻璃さんのお友達の方ですよね?」 「え?あ……はい」 昨日見たばかりの女の人。 小さくて、声もやわらかで守ってあげたくなる雰囲気。 「私、秋野 みゆって言います。玻璃さんから、私の事ってなにか聞いてますか?」 「いえ、何も。 私は、神奈 魅弥です」 名前を教えていないことに気づき、つけたす。 この女の人が誰なのか。 社長にとってなんなのか。 知りたいけど、知りたくない。 「最近、玻璃さんが冷たいんです……会ってくださる回数も減りましたし。 なぜか、分かりませんか?私、悲しくてっ。もし良かったら、玻璃さんに聞いていただけませんか?」 これまで、なんとなくは思っていても違うと覆い隠してきた。 でも、もう無理みたいだ。 この人は社長の彼女。 邪魔者は、俺。

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