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第95話

「えと……大丈夫ですか?」 ぼんやりしていることを心配してくれたらしい。 おっきな目で下からのぞきこんでいる。 「すみません、何でもありませんよ。こんなに思ってくれる彼女がいるのに、それはいけませんね。 伝えておきます。」 彼女と口にしたのは、否定されるのを期待して。 でも、そんなことはなくて。 「ありがとうございますっ、もし良かったら連絡先聞いてもいいですか? 相談とか、したいなって思って」 俺に相談? 何が好きかとか、誕生日はいつかとかの? そんなの聞かれても教えたくない。 自分で聞けよとそう突き放してしまいそうな、俺の中の黒い気持ち。 この子は素直でいい子そうだ。 そういうところで俺は駄目なんじゃないのか。 「いいですよ。こちらから送りますね」 やったとはにかむ彼女に嫌だという気持ちがつのっていく。 駄目だ。 本来、それは彼女が俺に向けるものだろう? 大切な、社長との時間を奪っている俺に。

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