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第11話 大切にしろよ ※R18
【大切にしろよ】
更に"あれ"から2ヶ月くらい経って、ポッキリ折れてた左手首の骨もようやく繋がる頃。風呂上がりのシドニーの髪をタオルで拭いてやってるとここ数日ずっと姿を見せなかったショットがフラリと帰ってきた。
「あ、とと!」
「おいシド、まだ髪濡れてるから」
「見て見てこれ」
シドニーは嬉しそうに机に置いてあったテスト用紙を手に取る。
「100点とった!全部正解!」
「すごい」
親バカみたいで恥ずかしいから口にしたことは無いが、シドニーは頭が良い。何でもすぐに覚えるし、ひとつ教えたら自分で考えて応用もできる。
「この問題みんな間違えたんだよ!ここがね……」
ショットはリビングのイスに座って、はしゃぐシドニーを膝に乗せながら大人しく話を聞いていた。
「でも俺、この言葉がよくわからないまま問題を解いちゃったんだ。ねえこれってどういう意味?」
シドニーが指差したのは"後悔する"という意味の単語だった。
「おれ、よめないから」
「とと文字読めないの!?」
「うん」
ほとんどまともに学校に通ったことが無い上に、元々の頭も悪いんだしな。そんな人間がいるなんて、というくらいに驚いているシドニーがおかしくて笑う。
「ちゃんと学校に通えて、文字を教えてもらえる事を有り難く思えよ?」
そう言うとどこか複雑そうに頷くから、頭を撫でてやった。
***
テストで良い点を取った所にショットが帰って来て構ってもらえて、ずっと騒いでたシドニーは唐突にエネルギーが切れたようにショットの膝の上で寝ちまった。
「あれ?おとなしいと思ったら急に寝たな」
「こどもだから」
「それ、お前が言うと笑える」
ベッドに運ぼうと手を伸ばすとやんわりと止められる。いつもなら何かある時は遠慮ない力加減で適当に掴まれるのに、やけに人間臭いその仕草に驚いた。
「ど……どした?ショット」
「ちゃた、手いたい」
おれが運ぶ、という事なんだろう。シドニーをヒョイと抱き上げるとガガガと雑な音を立てながらイスを動かして立ち上がり、ショットはそのまま寝室へ入って行った。
「え……」
あいつに気を遣われたりするのに慣れてなさすぎて、行き場のなくなった手をどうすれば良いか悩む。
「……ちゃた?」
俺がまだ戸惑っているとさっさと戻って来たショットに変な目で見られた。こいつに変な目で見られたら人間終わりだ。
「なに」
相変わらずの無表情だけど少しだけ首を傾げる仕草がなんか可愛く見えて、ついキスでもしてやろうと一歩近寄ると予想外にも一歩下がって避けられた。
「おい、おいなんで逃げるんだよ」
「だっておれ、力つよくて……いたくしたくない」
ショットの言葉に思わず笑うとじろりと睨まれる。もしかしてこの2ヶ月ちっとも俺に触れてこなかったのはリドルに言われた事をずっと気にしてたからなのか?
「はは……もういいんだって、そんな事」
笑いながら手を伸ばすと今度は逃げられなかった。まだどことなく不機嫌そうな頰に両手を添えて、引き寄せてキスをする。
「痛い時は痛いって言うから」
「……うん」
***
お互いに急いでシャワーを浴びてきたせいで重なり合った前髪から水滴が滴り落ちるけど、当然のように気にも留めない。
「……ん、ん」
久々に触れる体温にすぐ頭がぼやけてしまって、俺は後で思い出して恥ずかしくなるだろうなって思いつつも、甘えた言動が我慢できなかった。
「ん……ショット、早く、もっと」
「ちゃた、まって」
「待てない」
前は一方的に攻められるばっかだったけど、今回はおどおどビクビクしてるショットを俺が攻める形になって、正直すげー興奮した。耳を甘噛みしてから、首筋に舌を這わす。
「ん、ふ……こしょばい」
そのまま鎖骨の近くに軽く吸い付いてみると腰に回された手がピクッと反応した。
「っは……う」
低く掠れた呻き声が漏れる。
「お前、そんな可愛い声出せンのな」
ショットが感じてんのが嬉しくて、もどかしいくらいの刺激を何度も繰り返してやる。でも調子に乗ってるとスルッと服の中に入ってきた手に腰を撫でられて思わず反応してしまった。
「あ、あっ、待て、今は俺が」
「おれも……ちゃたさわりたい」
あっという間にショットの両手が服の中に入ってきて、主導権を握られちまう。前回とは打って変わって痛くしないようにと気をつけているんだろう、触れるか触れないかくらいの優しさで身体中を撫でられて、絶妙な擽ったさに声が漏れた。
「は、あっあ……あっ」
腰や背筋に指が触れる度に体が勝手に飛び跳ねてしまう。ショットはそれを面白がるようにずっとやめてくれない。
「やめっ……あ、あっ、ぁう……っ」
ショットの首に縋るような格好で刺激に耐えているとさっきのお返しなのか耳を甘噛みされた。
「……っ」
一瞬その後に続く痛みを覚悟して反射的に体を硬直させたけど、そのまま頬や顎を優しく舐められてゾクゾクする。
「はぁ……っ、あっ待っ」
「ちゃた」
ちゅうちゅうと首筋に何度も吸い付かれて、ただそれだけなのに、めちゃくちゃ気持ち良くて。
「あ、あぁっ、ぅ……く……っ」
「ちゃた、きもちい?」
両腕をそっと掴まれて、ゆっくりと仰向けに倒される。まるで本当に壊れ物に触れるみたいに気を遣われてるのが分かる。とはいえ、それでも十分すぎるくらい力が強い。
「……気持ち……っ良い……」
改めて聞かれて改めて答えるなんて恥ずかしすぎたけど、ショットが不安そうだったからちゃんと言葉で答えた。
「……」
「うわっ!」
ガバッと服をめくり上げられて、慌てて腕を引き抜く。その直後にまた首筋に熱い舌が押し付けられた。
「あっ!んん……!」
でかい声が出てしまって慌てて口を閉じるけど、あちこち撫でられて、舐められて吸われて、どんどん理性が擦り切れていく。
全身が性感帯になっちまったみたいに、どこに触られても勝手に体がビクビクと震えて止まらない。
「は、ぁ……あっ」
「ちゃた、すき」
「ばか、お前、も……しつこ……」
その指が軽く俺の乳首に触れたけど、なんとなく変な感じがするだけだ。
「ちゃた、これかたくなってる」
「ん……え、別に何にも……」
でも次の瞬間そこに赤ん坊みたいに吸い付かれて、視覚的なモノがやばかった。
――俺の胸にショットが吸い付いてる。
そう自覚した瞬間、ゾクゾクと背筋に痺れるような感覚が走った。
「や、めっ……あ、あっ!」
俺の反応を楽しむように、ショットはわざとピチャピチャ下品な音を立てて攻めてくる。
「……はっ!あ……!!」
やばい、なんか、感じてきたかも。
「す、ストップ、待て、ショット!」
慌てて止めさせようと手を伸ばしたけど、止める前に反対側に触れられて、今度こそ誤魔化しようもなく感じてしまった。
「あ、あぁ……っあ、ん、く……っ!!」
そんな所で感じてしまったのが妙に恥ずかしくて、腕で顔を隠す。
「はぁ、ちゃた……っ、ちゃた」
「や……やめ……」
「すき」
顔見せて。と何回も頼まれて顔から火が出そうだったけど、こいつは諦めないなと観念して腕を下ろすと興奮してオスの顔をしてるショットと目が合った。
そうしたらもう、悔しいけど……抱かれたいと思っちまったんだ。俺って、元からそっちの素質あったのかな。それともこんな本能剥き出しで迫られたら、誰だってこんな気分にさせられちまうんだろうか。
「も……っ、いいから……」
***
もういいと言ったのに、あれから20分経ってもまだショットは俺を攻めるのを止めてくれない。そろそろ頭が溶けちまいそうだ。熱い吐息が皮膚に触れるだけでも全身がビクリと反応して止まらない。
「あっ、あ、ショット……っ」
いつのまにか俺だけが全裸に剥かれてて、ショットはまだ上さえも脱いでないのに。
「も、いいって……!」
散々ローションで慣らされて後ろもグズグズになってるのに、ショットはまだ不安そうに愛撫を続けようとする。
「あ……う、ぅ……!もう、止め」
「ちゃた、へいき?」
「あっあ……!そこ、やばい、からっ」
腹側を押すように指をグッと押し入れられて、気持ちいいのに、刺激が物足りない。もっと、奥……。
「はぁ……も、早く……!」
うつ伏せになって懇願したら、俺の教え通りにゴムを着けてるのかしばらくゴソゴソと背後で動く気配がして、ようやくショットのモンがゆっくりと押し入ってきた。
「あ、あぁ……っ!あ……!!」
久しぶりの感覚に目の前がチカチカする。腹ン中いっぱいに異物感が広がって、熱くて、苦しくて。
「あぅ……う……っ」
「はぁ、はぁっ……ちゃた、きもち……」
後ろから抱き込まれてやがて腰と腰がくっついた。
「あつ……」
ショットのが俺の中に入ってる。溶けた頭で、半分寝言みたいにそう呟いた。腹を手で触ってみる。挿入の違和感にはまだ慣れないけど、この中に今ショットのが入ってんだというコトにめちゃくちゃ興奮した。
「や、ば」
「う……ちゃた、いい?」
コクコクと頷くと更にグッと腰を押し沈められる。
「はぁっ……う」
「ちゃた」
「うっ、ぐ……」
首筋にショットの荒い息がかかって、こいつも余裕なくなって来たな、とか考えてると奥まで入ってたモノがズルリと引き抜かれて震えた。
「あぁ、あ……っあ……」
四つん這いで、ゆっくりとピストンされて、揺さぶられて、こんな屈辱的な格好ないって思うのに、今回は違和感だけじゃなくて、ちゃんと気持ち良くて。
「あっ、あっ、あぁっ」
開きっぱなしの口から腹を突かれるたびに勝手に声が出る。情けねえ声……って思うけど、耐えられない。
「あ、あっ、は……う……っ」
少しずつ動きが早くなって、腰がぶつかるたびにパチュパチュと間抜けな音が暗い部屋に響く。だんだん俺の腰を掴む指の力も強くなってきて爪が食い込むけど、今はそれすら興奮の元にしかならない。
「あ……!あ、っく……ぅ……!」
どうしよう、気持ちいい。気持ちいい。それしか考えられない。グズグズに溶かされて、焦らされて、ようやく身体中が満たされて、こんなにされたら、もう……。
なんでか勝手に涙が出てきて、止められずに喘ぎながら泣いてると急にショットの動きが止まった。
「ちゃた!」
「っあ……なに」
ズルッと名残もなく繋がってたモノを引き抜かれて物足りなく感じる。でもショットはそれどころじゃないって顔で、俺は肩を掴まれて仰向けに寝かされた。
「どっかいたい!?なんで泣いてる?」
「あっいや、ちが……っこれは」
「ちゃた……泣いたらいやだ」
ちゅ、ちゅと溢れた涙に吸い付かれてちょっと照れる。
「……その……気持ち、良くて」
「……」
疑うように見つめられる。
「本当だからっ……早く、もっと」
そう言って|強請《ねだ》ると、グイッと両足を持ち上げられてすげぇ格好で挿入された。真上から体重をかけられて、目の前がチカチカする。
「あ、あ、ふか……っ」
「っく……ちゃた」
「う、っあ!ぁあっ!」
繋がってる所が丸見えで、目をそらしたいのに衝撃的すぎて思わず見てしまう。
「はっ、あっショット……っ、あっ、イキそ……」
また涙が出てきて、でもショットは止まらなかった。むしろ俺の泣き顔に興奮が増したような顔をしてしがみついてきた。
「はぁっ……ちゃた、ちゃたろ……」
グルル、と耳元でショットの喉が鳴って、興奮しすぎて唸るとか本当に獣だなこいつは……と笑えてくる。必死な顔を見てやろうと首を捻ると、衝動を|堪《こら》えるように自分の腕に噛みついてるのが見えた。
「ふっ、う……あっ、ショット、ここなら、噛んでっ、いい」
傷がない辺りを指差して見せると即座にガブリと噛み付かれて、俺マゾじゃないハズなんだけど、痛みを感じた瞬間に達してしまった。
「あっ!ひっあ、あっ……ぁあっ」
腰を持ち上げられてる格好のせいで、自分の精液が胸元にかかっちまったけど、力が入らなくてもうどうでもいいと思う。
「ちゃた……ぁ」
「うっ、く……っも、むり……」
「おれもいきそう」
「ぅわ!」
更に押しつぶされるような格好で上から押さえつけられて、俺ってこんなに体柔らかかったんだ、とか思ってる余裕さえなく激しく揺さぶられて。
「あ、あっあっ、うっ、ぐ、ぅ……っ」
腹が破れるって思うくらい突かれまくったかと思うと、中でショットのがビクビクと何回か震えて、それに合わせて腰をグイグイ押し沈められた。
「っう……く、う……っん……」
「はっ、はぁっ、はぁ……っ」
本能って感じだな。どんなに奥深く種付けしても俺は孕まねえけど。てかゴムしてるし。
「はぁ……うー……」
「重いって」
早くどけ、と肩を押すとショットは素直に離れて隣に寝転がった。
「……ごめん、ちゃた」
「なんで謝んだよ」
「またケガ」
肩に触れられて、血が出てた事に今更気付く。
「別にいいって」
いいって言ってんのに、なんとなく落ち込んだ顔をしやがるから、よしよし……と頭を撫でて慰めてやる。最近、コイツの薄い表情の変化が分かるようになってきたな。
「その……ちゃんと気持ち良かったから」
笑うとガバッと抱きつかれて、汗が冷えた体はちょっと冷たかった。
「ちゃた、すき」
「知ってる」
「だいすき。だいじにする」
「恥ずかしい事をシラフで言うなって」
しかも素っ裸でな。と言うとようやくショットも安心したような顔になった。
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