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第69話 生きていく為の力 4

【生きていく為の力 4】  俺が余計な事を言っちまったせいで勉強がすっかりイヤになっちまう可能性も心配してたが、あの言い合いの後もショットは俺が誘うと席について日々少しずつ学ぶ事を日課にしてくれている。  文字は一進一退……まだまだ苦手みたいだけど、数字の読み書きは不思議とスラスラ出来るようになったから、最近はモノを使わずに紙面上で足し算や引き算の勉強が出来るようになった。 「じゃあ、5に8を足したらどうなる?」 「13」 「……16+7とかも分かるか?」 「23」  やっぱり計算は明らかに得意みたいだ。文を組み立てて喋るのが苦手なのと目で見る力が弱いだけで、地頭は決して悪くないのかもしれない。  料理は数字がたくさん関係するし、並行して教えれば良いシェフに育つかも。そうなったら毎日メシ担当してもらおう。 「まじで悪くないな」  買い出しや洗濯を済ませて帰ったらショットがメシを作って待っててくれる……なんて生活の想像をしてると、思わず声が勝手に出た。 「なに」 「いや、なんでもない」  俺の作った問題を解いてるショットの手元を横から覗いてチェックしていく。 「すごいな、全部正解だよ」 「……」  100点って言いながら頭を撫でてやるとじっと見つめられた。 「どした?」 「ごほうび、ちょーだい」 「え?っうわ!」  肩を引き寄せられて頬にキスされて驚く。ご褒美だって?なんでまたいきなり。 「そんなのどこで知ったんだ?」 「シド言ってた」 「ああ、そっか」  そろそろ夏が近づいてきて中学校の学年末考査が近づいてるから、良い点が取れたらご褒美なって約束してたんだ。それをショットに話したんだろう。 「いいよ。ご褒美なにがいいんだ?」 「んー」  頬にキスし返して返事を待つ。クッキーか?ドーナツか?なんだって好きも嫌いも文句も言わずに食べるけど、絶対に好きなんだよな、甘いモノ。 「さわりたい」 「バカ、そりゃ良い点取らなくたって……っあ、今!?おいっ」  真昼間から!と言ってもコイツに時間帯なんて関係ないんだろう。 「わかったわかった、シドニーを迎えに行くから、3時までな。もう時計わかるだろ?」 「わかんない」 「嘘を|吐《つ》くなこら!」  ***  シャワーを浴びようと思ったら何故か当然のような顔をしてついて来たから、特に断る理由もなくて一緒に入る。 「じゃあ毎週末テストするか」 「テスト?」 「お前がどれくらい新しい事を覚えたかなって確認!」 「ごほうび、ある?」  原動力ってのは大事だよな。 「んー、あるよ」 「じゃする」  そろそろ"準備"しようとショットの背中を押した。 「なに」 「準備すんだから出てけよ、もう体は洗ったろ」 「おれもする」 「早く出ろ」  ウチはセパレートタイプだから、バスルームの真横の脱衣所エリアにトイレがあって、同じ空間に洗面台もある。俺はそのトイレの辺りをバスルームの壁越しに指差しながら「準備すんだよ!」ともう一度言った。 「うん」 「出てけ!」  それともテメーが"準備"すんのか?犯してやろうか!と脅す。 「おれちゃたさわりたい、なんでもいい」 「なんでも良くねーだろ」  コイツを抱く想像を少ししてみたが、萎える自信しか無かった。 「お前って、よく俺のコト抱けるよな……」 「?」  すぐ行くからヤリ部屋で待ってろと追い出せば、それ以上しつこく食い下がらずに出て行ってくれた。  パンツを履いてシャツを羽織っただけの格好でペタペタとアパートの廊下を歩いてると突き当たりの非常口の窓の外がまだ明るくて、俺は昼間っから何やってんだと思う。  まあでも、爛れた生活は今に始まったコトじゃねーな。 「ちゃた」 「わっ」  一番奥の部屋の寝室……ヤリ部屋の扉を開けるとすぐ抱きつかれて持ち上げられてベッドに落とされた。 「おい、待て……」 「もう待った」  そう言いながら腹の上にドカッと座られて「うっ」と腹から野太い声が出た。下着越しに見て分かるレベルで既にギンギンのモノを胸元に擦り付けられて笑う。 「もう我慢できねーの?」  腰ゴムを指で引っ張り、出てきたソレの先を舌で舐めた。 「ふっ、ふぅっ……ちゃた……っ」 「ん、ん」  ちゅうと先に吸い付くと先走りが漏れ出してくる。唾液と混ぜて更に先端をこねくり回すように口の中で愛撫してやるとショットの情けない呻き声が頭上から聞こえてきて小気味良かった。 「ん……」  それにしても相変わらずデカい。口の中いっぱいに含んでも1/3くらいしか入らないし、歯が当たらないよう気を付けてると顎が外れそうだ。 「はぁっ、ちゃた、のんで……」 「ん、ぐ……ぅ」  下から見上げるように顔の角度を変えると喉が開いて飲み込みやすくなる。頭を掴まれて吐き気を|堪《こら》えながら喉の奥に少しずつ迎え入れた。 「っう、ぶ……っ、……っ」  喉の中を埋め尽くされて、ほとんど息も出来なくなるけど、パニックになれば心拍数が上がってすぐに酸欠になっちまう。俺は目を閉じてショットの腰に腕を回し、苦しさと嘔吐感をやり過ごした。 「んっ、ん!ん……っ」  それでも体が反射的に異物を吐き出そうとして、勝手に腹に力が入る。"こう"してる時、俺の表情を確認できるようになったショットは苦しい顔をするとすぐに開放してくれるようになった。 「っぐぅ、う、え゙っ……はぁ、はぁっ……はぁ……」  生理的な涙が目に浮かぶ。 「ちゃた……もっかい、いい?」 「は、はぁ……、ッゲホ、あぁ」  息を整えてからまた少し屈んでショットを見上げるような角度で口を開く。また口がいっぱいになって、喉を押し広げながら熱の塊が入り込んでくる。 「っん……ん、んっ……」  苦しいけど我慢してまた何かを飲み込む時のように喉を動かすと、ズッと侵入される。 「うっん……」  今度は喉の入り口の引っかかりを楽しむみたいにゆっくり抜き差しされて、グポグポと下品な音が頭に響く。あんまそこを刺激されると、マジで吐きそうだ。そう思った瞬間、強めに頭を引き寄せられて一気に喉奥を突かれた。 「ん、んんっ!!んぶっ……!!」  急激な嘔吐感に慌ててショットの足をタップするがガッチリ頭を抑えられて逃げられない。体が勝手に仰け反って涙がポロポロとこぼれ落ちた。  でもコレは生理現象だから、この程度ではショットもまだ遠慮しない。俺も自分の体が苦しんでるのをどこか他人事のように感じながらそんな俺の反応をじっと見つめているショットを見つめ返した。  数秒後、まじで苦しくなって目を細めるとすぐ手を離してくれて俺はベッドに倒れ込んだ。 「っぷは……!はぁっ、はっ、はぁっ……!」  目や口や鼻から垂れる液体を拭う気力もなく呼吸を整えるのに必死になってるとショットが首に吸い付いてきた。 「はぁっ、あんま、見え……とこに、つけっ……ん、な」 「うん」  まだ息が苦しくて途切れ途切れにしか話せない。そのまま喉元、鎖骨、胸と降りていって乳首を舐められる。 「そこはやめろって……」 「ごほうびだから」 「ソレってお前にとってご褒美なわけ?」 「んん」  何も出ねえって言ってんのにちゅうちゅう吸われて苦笑する。普段あんま興味なさそうだけど、舐めはじめるとしつこい。 「も、やめ……、|擽《くすぐ》ったいから」 「んー」  押し退けてサイドボードからゴムとローションを取り出す。手早く装着してやると嬉しそうに押し倒された。 「はぁ……、はっ……」 「ちゃた」 「……っん」  最近のショットは向き合って挿入したがる。うつ伏せの方が俺の体的にはラクなんだけど、繋いでくる手を振り解いてまで体勢を変えようとは思えなかった。 「あ、あ……っ、あっ、ゆっ……くりっ」  ゆさゆさと軽く揺すられながら体の奥へショットがどんどん入ってくる。 「あ……あ、あ……」  もう何度目にもなるのに、今日は当たる場所の絶妙な違いのせいなのか、身体中がゾクゾクと痺れて少し怖かった。 「はぁっ、あっ、待っ……シュート、あっ!」 「ちゃた?」 「あっ、あっ」 「ちゃた、へいき?」  自分の呼吸の音しか聞こえない。多分ショットが何か言ってるけど……。 「ちゃた」  パチッと頬を軽く叩くように挟まれてハッと気がついた。俺はショットと繋がったまま一瞬だけ失神してたらしい。 「ちゃた、大丈夫?」 「わり……酸欠になってたかな、もう平気だ」  平気だって言ってんのに、緩いピストンしかしない。 「はぁっ……ん、我慢、すんなよっ」 「してない」  我慢してるというよりは、俺がまた失神しないか不安なみたいだ。俺だってなんでか分かんねーよ、別にそんなキツくなかったし、いや、それどころか妙に気持ち良くて、良すぎたのかも……とにかく今は意識もハッキリしてるからもう心配しなくていいのに。 「あっ、んっ、ん」 「ちゃた、ちゃた……」  気遣うように優しく抱きしめられて、奥までみっちり埋め込まれたまま腰をグリグリと動かされる。腹ン中でグチュグチュと直腸をかき混ぜられる音がした。 「ふぅっ……うっ、んっ!」 「ちゃた、きもちい……」 「俺、も」  舌を絡めるようにキスしながらモゾモゾと腰を擦り付け合う。 「う……っ、もっと、していい?ちゃた……っ」 「いいってさっきから言ってンだろ、っう、ぐ……!」  そう言った直後に引き抜かれてまた押し入られた。汗や体液で濡れた腰がぶつかってパチュッと音が鳴る。 「あっ、あ!はぁっ……はぁ、あっ!」 「う……いく……っ」  そう苦しそうに言いながらまた抱き寄せられて、背中に爪が食い込む。ガツガツ激しく抱かれながら溺れそうな気がして、その頭をかき抱きながら必死で名前を呼んだ。 「シュート、シュートッ」 「ちゃた、っ好き……」 「う、あっ、あ!」  動きを止めたショットのモンが俺の中でピクピクと痙攣してるのがなんとなくわかる。 「好き、ちゃた……もっとしたい」 「んん……もう今日はむり……」 「でもちゃたまだ」 「あ、いま触んな、あっ!」  軽く中イキしてたから不意に前に手を伸ばされてビクッと大袈裟に飛び跳ねちまった。そんな俺の反応に気を良くしたのか、ショットは余韻もなくさっさと引き抜いてゴムを外しもせず俺のモンを咥える。 「……っ!!待て、あ、あ!」  すぐイッちまう……と声すら出せずにショットの口の中に出しちまった。 「ん」 「はぁっ、はっ、はぁ……だから、飲むなって……」 「ちゃたの、ぜんぶのむ」 「それは……もう、わかった……から……」  なんでそんな飲みたがるんだよ。俺だってショットのを飲んだ事あるけどさ……毎回そんな気分になるわけじゃない。この前のは、そう、魔が刺して……。 「好きだから、ちゃたと一緒がいい」 「一緒……?」  疲れ果ててベッドの上でぐったりしながら聞き返す。背中がヒリヒリ痛い。血は出てないくらいかもしれないが、赤い線が何本もついてる事だろう。 「ちゃたの中に入ったら……」 「お、おう」 「ちゃたと、同じになるみたい」 「同じ?」 「うれしい」  俺と繋がってる間は同一の生命体になってるみたいで嬉しくて、だから体液も共有したいって事か?なんか……ちょっとエロいな、それ。  だからって俺はコイツの小便を飲みたいとは流石に何があっても思えねーけど。  ***  シャツのボタンを留めながら「お前って、数字なんで読めるの?」と聞いてみた。 「なに」 「1とか2とか、なんで分かるんだ?」 「……」  説明する言葉を探しているのか、しばらく黙った後にショットは窓の外をじっと見つめた。 「いつも、見る……28」  28? 「もしかして……マウロアの月命日か?」 「ん、ロアに会いにいける日」  スラムにはいつも日付と時間と気温なんかが表示される電光掲示板のついたビルがあって、|法外地区《ゲートの外》からでも見ることができる。 「そっか、どうやって日付を理解してんのかと思ってたけど……」 「アレが28になったら、来ていい」 「|首領《ドン》がそう言ったんだな」 「ん」  電光掲示板はあっちな。とその顔を掴んで北側の壁を向かせる。窓の外は南だ。てことは、数字の概念をコイツに説明したのは首領か。苦労しただろうな。  毎日あれを見つめて28になるのを待って、いつの間にか数字を覚えて、簡単な足し引きが出来るようになってたのかもしれない。マウロアに会いたいっていうこいつの気持ちはそれだけ強いんだな。  俺にはその寂しさを埋めてやる事は一生出来ないんだろうか……と少し思ったが、コイツにマウロアの事を忘れて欲しいとは思わない。それなら、その寂しさは生涯の重りとして受け入れるしかないんだろう。 「シドを迎えに行ってくる」 「ん」 「ちゃんと服着ろよ、風邪ひくから」 「ん」  その重りを一緒に背負えたらいいなとは思う。眠そうにしてる額に軽くキスをして俺は家を後にした。

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