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第75話 冷たくするなんてできねぇよ

【冷たくするなんてできねぇよ】  帰った日の夜、ショットは寝不足のハズなのに俺がまたいなくなるんじゃないかって不安なようで30分ごとに目を覚ましては何度も名前を呼ぶから、俺はその度に頭を撫でてやるのに忙しくて全然眠れなかった。  明け方になってようやくグッスリ眠ってくれたから、そっと腕の中から抜け出して急いでシドニーのサマーキャンプの準備をする。 「おはよーとーちゃん、眠れた?」 「おはよう、ごめんな何も出来てなくて」 「大丈夫、昼に集合だから」  デカめのカバンに着替えやタオルを詰め込みながらこの2週間がどうだったのか聞いてみた。 「最初の3日間はたまたまととが帰ってこなくて助かったんだけど、4日目に帰ってくるなり『ちゃたは?』って……なんだか、とーちゃんがいないのが分かってたみたい」 「ああ……もしかしたら初日から探し回ってたかもしんねーな……」  それからも当て所なく延々と街中を探し回るから、6日目にリディアとオーサーが拾って連れて帰ってきてくれたらしい。 「死ぬような用事じゃないってオーサーが教えてくれたから、俺は心配だなぁ……って思うくらいで済んだんだけど、ととはしんどくなっちゃったみたいで、基本ずっと具合悪そうにご飯も食べないでグッタリしてた」  7日目から13日目まで、とにかく情緒不安定で大変だったらしい。オーサーがその度に面倒を見てやってくれていたらしいが……追加料金はナシにしてくれたの、信じられねーな。 「でもとーちゃんが帰るって言ってた期限が近付いてきたから、俺も不安になってきちゃってさ……遅いね、何かあったのかなって、つい、ととに言ったんだ、そしたら……」  部屋を飛び出して行ったきり少し追ったが見失って、シドニーはその後の事を知らないらしい。それがきっとオーサーが電話をしてきたタイミングだな。あの日、とうとう手に負えないと思うほどの何かがあったんだろう。 「そっか……シドが一緒にいてやってくれて良かった。前は俺がリドルのトコに行ったまま、その日の夜に帰らなかっただけで血眼になって探し回ってたんだからな」  あの時はリドルに襲われかけてたから、探しに来てくれて結果的には助かったんだけど。てか今気付いたけど、あそこにショットが現れたのも俺の声を頼りに探しに来たんだろうな。 「去年のあの事件のこと?」 「いや、一昨年にもリドルのとこでちょっと色々あって」 「とーちゃんって、無防備すぎるんじゃない?」 「うっ……お、俺は年頃の女じゃねーんだよ、なんでそんな警戒して生活しなきゃなんねえんだ」 「反省の色ナシだね」  とにかくシドニーは友達に誘われて今日から3週間のサマーキャンプへ行くことになってる。家にいようかって言ってくれたけど、子供の頃の夏の思い出は大事にしてほしい。  こんな事で押して悪いな……と思いながら俺は緊急ボタンで首領の部下に来てもらい、シドニーの送迎を頼むことにした。 「こんなコトで呼びつけて悪い」 「気にすんな。それより帰って来てたんだな。どうなる事かと思ったぜ」 「やっぱり何かあったのか」 「落ち着いてからまた話す。酷い顔だ、とにかく寝ろ」 「ああ……そうさせてもらう」  走り去る車を見送って、ショットが起きてるかもしれないと慌てて部屋へ戻った。  ***  寝室に戻るとショットはまだよく寝てて、その頬は少しやつれて見える。本当に眠れてなかったんだろうな。 「……」  ――俺だって、お前に会いたかったよ。  早く目を開けて、声を聞かせてほしい。でも穏やかな眠りを妨げたくもない……でも、やっぱり我慢できずにそっと手を取って指にキスをした。 「ショット……」  起こさないよう慎重に隣に潜り込むと頭に手が回されて抱き寄せられた。 「ん、ん……ちゃたろ……」  寝ぼけながら確かめるように頭や首筋に触れられて、久々の体温にジワジワと満たされる気持ちがする。 「……」  もっと、もっと触ってほしい。そう思った瞬間、腰をグッと引き寄せられて体の前面がピッタリくっつく体勢になった。頭の下にもう片方の腕があって、後で痺れないかな……と少し心配になるが、素直に体重を預けた。 「っふ……」  ゴソゴソとそのままショットの手が俺の服の中に入ってきて、背中に直接触れる。ヤッてる夢でも見てんのか? 「あ、あっ」  ピリッと痛みが走った。ダーラの下手な鞭のせいで皮膚が裂けた場所だ。あいつに与えられる痛みは不快でしか無かったが……。 「はぁ、あ……」  寝てる相手にサカッて、寝込みを襲うなって叱りつけたのはどこのどいつだ、と思いながらも止められない。心の中で謝罪しつつ、ショットの腹に腰を擦り付けた。 「ふっ……ふうっ……」  背中に感じる手のひらの熱さともどかしい快感に夢中になってると、気付かないうちにショットが目を覚ましてたらしい。ガバッと乗り上げながらベッドに両手を押さえつけられて驚いた。 「あ、ショッ……悪い、俺っ……」 「ちゃた」 「うあっ」  耳に齧り付かれて痛みに声を漏らすと服を破かれた。そのまま首筋や胸元に舌が這わされて、待ち望んだ接触に全身が大袈裟にビクビクと反応してしまう。 「ふぅ、ショット、背中っ……舐めて、くれ」 「ん」  体を転がして自らうつ伏せになると脱ぐよりも先に更に服を破かれて、服だったモノはもはや腕に巻きついてるだけの布になっちまった。 「はぁ……っ、あっ、あ……」 「なに、これ」  ショットの指が背中の傷跡をなぞる。直後に爪が立てられて、傷を抉られる痛みが脳に突き刺さった。それでも逃げずにシーツを掴んで耐える。 「う、ぐっ……!ぅ……!!」  血が垂れた場所にショットの唇が触れる。苛立ったように力任せに腰を抱かれて、裂けた背中の傷に舌が這わされた。 「はぁっ、あっ……あぁっ」  情けない声しか出ない。背後でカチャカチャとズボンを脱いでいるような音が聞こえる。 「んっ、んうっ」  口に指が突っ込まれて血の味がした。俺の血か……もしかしたらショットの血かもしれない。昨晩から気になってたんだが、何故かショットの指先がボロボロになってて、爪の割れている指もあった。  後ろから覆い被さって口の中をかき混ぜられる。吐きそうで苦しいが、背中にショットのモンが擦り付けられて興奮した。 「あ、待てっ、何の準備もしてない、からっ」 「いい」 「おいっ」  俺のズボンと下着も問答無用で脱がされて、信じられないコトにケツを舐められた。 「こら、おいっ!やめっ」  両足をガッチリ捕まれちまって動けない。やめさせたいのに、感じたことのない刺激に腰が抜けてすぐ抵抗できなくなっちまった。 「まじ……汚い……って!」 「んん」 「やめろ、あっ、あ……」  しばらくそうした後に突然ブツが当てられて慌てた。絶対まだ入らない。 「ショット!む、無理っ……!」  ぬるぬると先走りを塗り付けるように動いた後、無理やり押し広げながら先端を突っ込まれた。 「あ!あっ、あ……っ、あぁっ」  痛い。苦しい。逃げようとしても抱き抱えられて無理やりに押し沈められる。 「ぅあ、あ!」 「ちゃた」  諦めるしかない。先に寝込みを襲ったのは俺なんだから。これは自業自得だ。そのまま無遠慮に揺さぶられて意識が飛びそうになる。 「うっあっ、あっぁあ、あっ!」 「ちゃたろー……」  久々でもお構いなしであまりにも激しい抽送にほとんど悲鳴みたいな嬌声が漏れたが、どれだけ騒いでも今日は隣にシドニーはいない。だから容赦なく与えられる痛みと快感に俺自身の理性もあっという間に失くなっちまった。 「あっ、シュートッ、ん、ぐっ」 「ふぅっ……ふーっ」 「あ、あっ」  熱い。引き抜かれたモノから熱い液体が背中に掛けられて、下半身に塗り広げられる。 「はぁ……ああ、あ……」  そしてまた挿入されて、その熱に押し出されるように俺も腹の下でドプドプと精液を吐き出した。 「シュート、も……もっと……」 「ん」  ようやく触れられた……二週間ぶりなんだ。まだ終わりたくない。もっと感じたい。後ろから抱きしめられて、体を捻るように振り返る。 「ふっ、んっ、ん……っ、ん、ぐっ」  腰を揺らしながら貪り合うようにキスをすると歯が当たってガチガチと音が鳴るけど、気にせず繋がったまま舌を絡めた。 「ちゃた、こっち」 「はぁっ……はぁ、あ」  足を持ち上げられて仰向けになる。角度が変わってショットのモノが抜けちまった。 「はっ、う……、シュート、早く、はやくっ」 「うん」  もうどうにかなっちまいそうだ。いや、とっくになっちまってんのかな。  俺たちはその後、後処理の為に入ったシャワーでも抱き合い、シャワーから出た後にも脱衣所で抱き合い、会えなかった二週間分を補填するかのように、ひたすらお互いの肌に触れ合った。  ***  そんなわけであっという間に帰って来てから3日が経ち――流石に性欲は落ち着いたものの――ショットは俺からひとときも離れなくなっちまった。「もう黙ってどこにも行かねえよ」って言ってんだけど、残念ながら信用ないらしい。  いつか軟禁されてた時みたいに寝る時は抱きつかれて、起きてる時はずっと後追いされてる。  一人でトイレやシャワーに行くと騒ぐので扉が閉められないし、料理する間だけ少し離れろって言ってもダメだ。おかげでゲートの内側にあるコインランドリーには行けてないから、そろそろ綺麗なタオルとシーツが残り少ない。  特に起きた瞬間に俺が見える場所にいないと大騒ぎになるので、いつ目を覚ますか分からない状態だと安心してトイレにも行けない。  だからよく寝てんのに悪いな……と思いつつ頬に触れて声をかけた。 「ショット、そろそろ昼になるぞ」 「ん……」  その指先は3日経った今もまだ痛々しい。 「なあ、これどうしたんだ?」 「わかんない……」 「気をつけてくれよ」  路上で誰かと喧嘩をしてきたって感じでもない。俺が帰ってこないストレスで扉か床か……何かを無我夢中で引っ掻いたんだろうか。それだけ不安にさせちまったんだ、しばらくはこんな生活が続いたとしても仕方ないかもな。  なんて悠長に構えてたんだが……数日後、洗濯物が限界でよく寝てる隙になんとか、とコインランドリーへ行って帰ってくると酷いパニックを起こしたらしいショットがリビングでぶっ倒れて吐いてたのには流石に焦った。 「おい、ショット!!」 「う、ぅ……ちゃた、ちゃた……っ」  すぐに駆け寄り抱き寄せて背中をさすると、乱れてた呼吸が|治《おさま》っていく。 「落ち着け、俺はちゃんと帰ってくるから」 「はぁ、はぁっ……」 「黙ってどこにも行かないって」  吐いちまうほどの動揺に、このままにさせてると俺が自殺未遂した時の事まで突発的に思い出してしまうんじゃないか……と感じた。 「なあ、わかってくれよ……」  何よりもそれだけは避けたい。

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