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家族編 第21話 おれ、ふゆ、すき

【おれ、ふゆ、すき】 ◆本編終了後 シュート30歳の年の冬  今年も冬がやってきた。もう何回目だったか。数えることすら面倒になるくらい、ここでの暮らしが長くなってきた。  ロクな暖房器具もないボロアパートの真冬の早朝だってのに背中がポカポカ暖かい。ショットが後ろから抱きしめてくれてるから。  あんま揺らさないよう気をつけながら寝転がるとスヤスヤ寝ながら頬に吸いつかれた。そのまま猫みたいにペロペロ舐められて小さく笑う。 「俺、この先もずーっとこの街にいンのかな」 「……」 「それも悪くないよな、お前と一緒ならさ」  いつかクレイグが将来に不安を感じてるみたいな事を言ってたけど、将来ねえ……。俺はなるようになるとしか思えないんだよな、やっぱり。 「ん……ちゃた……」 「おはよう、起こしちまったな」  ガッと雑に頭を掴まれて顔中を舐められる。何歳になってもこういうトコは変わんないけど、そういうコイツを可愛いと思うように俺はすっかり変えられちまったな。 「寒くないか」 「んーちゃたべーして」 「寝起きだぞ」 「んん」 「ったく……」  望むまま舌を出してやると吸いつかれてモグモグされた。あんま本気で噛み付いてくれるなよ……と祈りつつ、もし何をされたって抵抗する気なんかなく、されるがまま大人しくする。いつだったか、血管を噛み切られた時は酷い目に遭ったモンだ。 「ん、う……」  まあでも、力加減もまじで上手くなったよな。抱き合う度にあんなに血まみれになってた日々が懐かしい。 「ちゃた、ちゃた……っふ……もっとさわりたい……」 「朝から元気だなお前は」  寝起きでなんでそんな興奮してんだよ、と思わず笑うと嬉しそうにひっついてきたから俺からキスしてやるとベッドに仰向けに転がされた。 「待て待て、やめろこら」 「なんで」  そのまま馬乗りになって首にカプカプと甘噛みしてくるから、押し返すと不満そうに睨まれる。 「ストップ、せめてシャワー浴びてから……」 「いい、しない。さわるだけ」 「うわっ」  服を捲り上げられて急に触れた冷たい空気に身震いした。 「寒いって」  そう言いながら抱きつくとぎゅっと抱きしめてくれる。 「さむい?」 「うん、寒いよ。だって真冬の朝だぜ」 「ふゆ」  冬ってのは寒いんだ、と言えばしばらく何か考えて「おれ、ふゆ、すき」と呟いた。 「はは……なんだそれ急に」 「ちゃた、くっつくのうれしい」 「あ?お前は夏でもくっついてくるじゃん」  聞いてんのか聞いてないのか、しつこいくらい顔中にキスされる。今日はやけにテンション高いな。 「んー」 「どうした、ん……、なんか、良いことでもあったのか?」  感化されて俺まで嬉しい気持ちになる。コイツが嬉しそうにしてると、それだけで満たされるんだ俺は。 「……シュート」 「なに」  たまには俺からも"可愛がって"やろうと服に手をつっこんでみる。左腕を背中に回しつつ右手で腹を触った。 「俺にも触らせてくれよ」  腰や背中を撫でてみたり、肋骨のラインを一本一本確かめてみたりする。いっつもされてばっかで、こんな風に俺からコイツの体に触れるのは珍しい。 「ん……」 「悪い悪い」  つい楽しくて臍をいじってると嫌そうに身じろぐから、指の甲で腹筋のラインを確かめながらスルリと手を胸元まで滑らせて、胸板に手のひらを当ててみた。心臓の鼓動が伝わってくる。 「……」  その振動をしばらく感じてるとジワジワと不思議な感覚が襲ってきた。なんつーか……ショットが"生きてる"って実感して……幸福感に包まれる。 「心臓が動いてんのは当たり前のコトなんだけど……なんかいいな、これ」  そのまま指先で鎖骨を撫でると|擽《くすぐ》ったいのか手を掴まれた。 「なんかいい?」 「ああ、このトクトクって音、生きてる音なんだ」  お前も聞いてみるか、と腕を広げると素直にくっついて胸元に頭を預けてくる。 「この辺な。トクットクッて聞こえると思うから」 「……」  どんな顔してンのか見えないけど、しばらくしてショットの全身から「嬉しい」みたいなオーラがぶわっと発されたのがわかった。 「っはは、嬉しいのか?」 「……うん」  可愛いやつ。そのままぎゅうと抱きついてくるから、少し苦しいけど好きにさせてやる。 「ちゃた……」 「ん?」 「だいすき」  いつも以上にふにゃふにゃしてるなと思ったら寝たみたいだ。このまま乗せてるとさすがに苦しいから横にズリ落として、ちゃんと枕の位置に寝かせてやってから頬にキスをした。 「俺も大好きだよ」

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