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番外編◆もしもの世界のBOX 10
【もしもの世界のBOX 10】
茶太郎(13) テッド(8)
▼一緒におつかいをする話
今日は俺の家の近くのプロムナードでテッドたちと合流する予定。最近はこんな風に予定を合わせて一緒に出かけることが増えた。
「テッド、おはよう」
「ん」
駆け寄ると両手を伸ばしてくるから抱き上げる。初めて会った頃より重くなった気がする。ランチはみんなで一緒に……なんて段取りを話し合ってる親たちを尻目に俺たちはプレイエリアに向かって歩き出した。
「茶太郎、メッセージ見てね」
「わかってる」
少し前に携帯を買ってもらったんだ。別にいらないって思ってたんだけど、テッドと遊ぶ時にも連絡手段があったら安心だからって言われて納得した。腕の中でテッドがモゾモゾ動くから降ろしてあげると、首から掛けてた携帯を手に取る。
「あ、これ?携帯だよ」
「……」
「後でさわってみる?」
お昼くらいまで自由行動だから、俺たちは手を繋いでプレイエリアに向かった。
しばらくプレイエリアで遊んでると小さい子どもたちがいっぱいやってきて、キャアキャアはしゃぐ声が響き渡り始めたから場所を変えることにした。
「静かなところ探そっか」
あんまり歩き回っても疲れるし、ちょうど空いてるベンチがあったから座ってみるとテッドが目の前に立ってじっと見つめてくる。
「座らない?」
「……」
あんまり見つめ合ってるとドキドキする。反応に困ってるとズイッとテッドの顔が近付いてきて、鼻と鼻がぶつかったから慌ててほっぺに手を当てた。
「テ、テッド!」
大きい声を出しちゃった。だって、ちょっとだけ唇もぶつかった気がしたから。なんとなく周りに目をやるけど、誰も見てなかったみたいで素通りしていく。
「……あ、ごめんズレちゃったね」
外れかけたイヤーマフを付け直してあげてると母さんがやってきた。
「茶太郎、そろそろランチ行こうか」
「あれ、メッセージくれてた?」
「送る前に見つけたから」
父さんたちが先にレストランに入って席を取ってくれてるらしい。そしたら母さんの携帯に『小麦粉を買い忘れてた』ってメッセージが入った。
「もう、めんどくさい」
「俺が買ってこようか?」
なんでも食べるし、俺の好きそうなやつテキトーに頼んどいてよ、と財布を預かってひとっ走り行ってこようとしたらテッドに服を掴まれた。
「先に行ってて、すぐだから」
「……」
困ったな。
「一緒に行く?」
そしたら何か言いたげにするから、しゃがんで口元に耳を寄せると小声で「いく」って言われた。
「……い、一緒に行ってくるよ」
「何を悶えてんのよ」
***
テッドって俺以外には興味なさそうだけど、警戒心もあんまり無い。だから「知らない人についてっちゃダメなんだよ」「食べ物をもらっても食べちゃダメだからね」って教えながら食品ストアの中を一緒に歩いて、いつも家で見るデザインの小麦粉の袋を抱えてレジへ向かった。
「俺のポケットの財布からお金出してくれる?」
会計の列に並びながらそう頼んでみたけど、テッドはくりくりの目で俺を見つめてるばっかりだ。
「むずかしい?」
「う」
「……」
そのまま見つめ合ってるとうっかり「可愛いね」って言葉が口から出そうになったけど、レジの人に呼ばれて慌てて前に進んだ。
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