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番外編◆もしもの世界のBOX 11
【もしもの世界のBOX 11】
茶太郎(13) テッド(8)
▼お泊まり会をする話
クリスマスが近付いてきたある日、俺ははじめてテッドのお家にお泊まりさせてもらえることになった。
この頃ごはんをいただきに来ることは増えたけど、さらに今日はその後もテッドと一緒にいられるなんて嬉しすぎて、もうずっと浮き足立ってた。
「茶太郎くん、お風呂は?」
ごはんの後にテッドの口を拭いてあげてるとお母さんにそう声をかけられた。
「すませてきたよ!」
「テッドももう入ってるから、じゃあパジャマに着替えてお部屋行きましょうか」
まだ眠くなかったら絵本もあるよって言われたから本棚を見てみる。
「いろいろあるね」
「良かったら読み聞かせてあげて」
「うん!」
どれが好きなの?って聞いてみたけど、あんま分かんないらしい。でもどれでも大人しく聞いてくれるっていうから、読み聞かせてあげたいなって思った。
「大体9時くらいに電気消してね」
「うん、おやすみなさい!」
扉が閉じられて振り返ると、俺の近くにいたテッドがじっと見上げてきた。
「じゃあ絵本どれか読んであげよっか?」
「……」
でもあんまりノリ気じゃなさそうに見えたから「もうねむい?」って聞くと手を掴んでベッドに連れて行かれた。
「おふとん入る?」
「う」
マットに腰掛けて手を広げたら嬉しそうに寄ってきてくれるから、抱き上げて一緒に寝転がる。
「じゃあ電気消そっか」
ホントはちょっと遊びたかったけど、テッドがもう眠いなら仕方ない。そう思ったのに、元気にぎゅうぎゅう抱きつかれてビックリした。
「テッド?」
「ん……」
「え、うわっ、ちょっと」
そしたらテッドが急に俺の体によじ登るみたいに移動してきて、首元に吸い付かれた。小さい唇が首筋にちゅ、ちゅって何回も触れて心臓がバクバクする。
いつもの噛みつきかなって思ったけど、顔にも次々キスされて、慌てて口を手で覆った。
「テッド、ストップ」
あんまり騒いでお母さんたちが来ちゃうのが怖くて、小さい声で「待って」って何度も繰り返す。
「……」
「ごめん、イヤじゃないし、怒ってるんでもないよ」
テッドは俺のこと、すごく気に入ってくれてるから、きっとただくっつきたいだけなんだと思う。だから、これもテッドにとってはその延長。
でも、こういうコトは"恋人同士"がする大事なことなんだ。それをまだ知らないテッドとそういうことをするのは、なんていうか……ルール違反な気がした。
「俺もテッドが大好きだよ。でも、唇のキスはとっても大事なことなんだ」
ちゃんと分かるようになってから、それでも俺としたいって思ってくれたら、その時は恋人になろうって説明する。
「……だいじ」
「そう。だから今はおはようとかおやすみのキスだけだよ」
ふくふくのほっぺにキスをして頭を撫でると、テッドも同じように頬にキスしてくれた。
「もう寝よっか。ね」
俺の上に乗っかったままのテッドを隣に寝かせて布団をかけてから、ベッドサイドにあるスイッチで部屋の明かりを落とした。
「ちゃた」
「ん?」
最近、こんな風に呼んでくれるのが嬉しい。なんだか、二人だけの呼び名みたいで。
「……」
「くっついて寝る?」
「ん」
小さい頭を抱き寄せると鎖骨の辺りにまた吸い付かれたけど、まあいいやと思ってそのままくっついて目を閉じる。
「明日もずっと一緒だから、起きたら遊ぼうね」
「ん」
「……大人になって、それでも俺のこと好きでいてくれたら……恋人になろうね」
「ん」
こんなのただの口約束だけど、嬉しくてテッドをぎゅっと抱きしめた。
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