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番外編◆現代日本の世界のBOX 10
【現代日本の世界のBOX 10】
◆社会人茶(33)撃(28)
▼のんびり過ごす日
今日は仕事しないと決めたから、シュートとシドニーに朝メシを用意した後はずっと布団に寝転がってのんびりしてる。たまにはこういう日もいいよな。
「……」
この頃、漠然と考え続けてることがある。シュートとの養子縁組についてだ。白内障の件は置いておいて、親族の同意が必要なレベルの大病をしたこともないし、周囲にもそのまま受け入れてもらってきたから、結局俺たちは法的には他人のまま。
手続きの中でシュートがイヤなことを思い出す懸念がある以上、ズルズルと後回しにし続けてきた。
でもこのまま10年20年ずっと一緒にいて、それこそ法的に"家族"じゃないと困るような場面が出てきた時に、今のままで後悔しないかって言われると悩む。
「それか……パートナーシップってヤツか……」
病院での面会や情報開示はしやすくなる可能性があるらしいけど、正直、行きつけの病院のセンセ方は既に俺たちのことを理解してくれてる。相続問題なんかも、オーサーとマウロアの力を借りて委任状も遺言書もしっかり作ってあるし。結局あんまり必要性を感じてないわけだ。
もちろん、シュートと法的に認められた正式な親族になれるってのは悪くはない。でも、そんなモンに頼らなくったって俺たちは立派な家族だからなあ。
ちなみに美容院とか手紙の宛名とか、シュートの目につく書類とか公的じゃない場所では『山代 シュート』って書いてる。病院でも表向きは完全にその名前で通してもらってるし。
「んー……」
でも、シュートの"セオドール・A・ブラッドレイ"としての過去を完全に消せるってのはメリットだ。今更あり得ねえけど、万が一にも両親がシュートを探し出して連れ戻そうとしたとしても、キッパリと拒否できる。
もしそんなコトがあったとしても、絶対に住んでる場所も連絡先も開示しないでくれって施設には頼み込んであるけど。職員にも入れ替わりがあるし、物事に絶対なんてないから。
「ちゃた?」
「おかえり、昼メシにするか?」
シドニーと散歩に行ってたシュートが帰ってきたから体を起こすと抱きついて頬を甘噛みされた。
「……なあ」
「なに」
「……」
何をどう聞くにしても、余計なコトを思い出させちまう気がして。
「昼メシ、雑煮でいいか?モチまだあるからさ」
「ん」
一緒に作ろうかって誘えば嬉しそうにする。やっぱり、誰に認められなくたって今が充分に幸せなんだよな……。
***
昼メシを食った後またダラダラしてるとシュートに無理やり起こされた。
「なんだよぉ、今日はゆっくりすんだってば」
「んん」
「退屈なのか?」
抵抗しても軽々と持ち上げられて庭に連れ出される。部屋着だってのに。仕方なくシュートとシドニーと一緒に遊んでると、ふと思いついた。
「あ、ドッグランでも行くか?シドも連れて行けるし」
「……」
でも喜んで「行く」って言うと思ってた予想に反してシュートは微妙な顔をする。
「なんだよ?」
「……ちゃた、今日ゆっくりするから」
あんまり言いすぎて我慢させちまったかなって思ったけど、背中から抱きつかれてビックリした。
「うわっ……シュート?」
「おれも、ゆっくりする」
そう言いながら頬にキスされて、振り返ったら唇にもキスされた。
「ん、こら、外だぞ」
「んー」
俺たちがいちゃついてると足元でシドニーが仲間に入れろってキュウキュウ鳴いてる。
「じゃあ今から昼寝して、後で一緒にプリンでも作るか」
どうも妙に"盛り上がってる"みたいだから、ただの昼寝じゃ済まねえかもだけど。
まだ日も高い時間から布団に潜り込む。特に何もしないでメシを食って寝るだけの贅沢な休日に、更に可愛い恋人が寄り添ってくれるなんて、マジで最高だな。
昼寝……なんて言ってたハズなのに、日が傾き始めるまで俺たちは夢中になってお互いの肌に触れて過ごした。
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