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番外編◆現代日本の世界のBOX 12

【現代日本の世界のBOX 12】 ◆社会人茶(33)撃(28) ▼成長を感じる日 「うわー、思ったより降ってきたな」  買い物を済ませて店を出ると、せいぜい小雨程度だと思ってた予想に反して大粒の雨が降り出していた。 「シュート、さっきの傘……あれ?」 「なに」  会計する時に持っててくれと頼んだ傘がシュートの手に握られてないコトに気が付いて苦笑する。 「どっか置いて来ちゃったのか?」 「……ん」  駐車場まで大した距離じゃないし、ちょっと濡れるけどいいか?と確認するとシュートは少し考えてから「まって」って呟いて店の中に戻って行った。 「え、シュート、おい……」  常に一緒に行動するのが当たり前になってて、待つように言われたのなんか初めてだ。スタスタと立ち去って行くシュートの背中を見てると妙な寂しさを感じる。 「……」 「あった」  すぐに戻って来たその手には確かに俺が預けた黒い傘が握られてて、それを片手で広げながら振り返ってもう片方の手を差し出された。 「え?」 「ん。もつ」 「え……いいよ、傘差してくれてんだし」  そう言ったのに問答無用で買い物袋をひとつ奪い取られて呆気に取られる。 「ちゃた?」 「あ、わり」  歩き出したシュートの傘の下に駆け足で入る。車の鍵をポケットの中で握りながら、いつの間にこんなにしっかりしてたんだ?なんて考えた。  きっと毎日少しずつ何かが変わってンだろうけど、ふとした瞬間にそれを一気に感じてこんな風にビックリするんだよな。  ***  また別の日には晩メシ後に珍しくシュートからロアと話すって言ってきたから、タブレット端末を貸してやると自分でビデオ通話を掛け出した。いつも隣で手順を見てるし、電話帳は顔写真付きだとは言え、思わずデカい声が出そうになるくらい驚いた。  そうとも知らずに呑気に応答したマウロアは昼間なのか、カフェみたいな場所でコーヒーを飲んでるみたいだった。 『よお、どうしたー?』 「ロア次いつくる」 『え、え?決めてないけど、何かあったのか?』 「ん……」  もしかして会いたいのかな。横から助け舟を出しそうになったけど、シュートの言葉が出るのを待つ。 「……おれ」  チラッとこっちを見てきたけど、俺が何も言わずにいると意を決したように「ロア会いたいから」って呟いた。 『すぐ行く!!今から!!!』 「おい無理すンなよ」  まあ気持ちは分かる。ちなみにシュートが自主的に電話かけたんだぞって教えてやると「俺もいつでも会いたいぞ!!」ってデレデレしてた。  ***  マウロアはまじで最速の便に乗ってこっちに来るらしい。もう日本で一緒に暮らせばいいじゃねえかって提案したこともあるけど、キッパリ断られた。あいつには守るべきファミリーがいるんだと。  いわゆる"裏社会"っていうのか……マフィアのコトは俺にはよく分からねぇけど、割と地域に愛されてるらしい。警察も介入したがらないような無法地帯で、配給をしたり仕事を斡旋してやったり。  でも逃げて来た移民に偽造したビザを作ってやったり、問題を力で解決することも珍しくないから、やっぱり"裏稼業"なんだって言ってた。シュートには関わらせずに済んで良かったって。まあマウロアらしいなと思う。困ってるヤツを放っとけないのは性分なんだろうな。  寝る準備を済ませてベッドに潜り込むとメッセージが入った。 「マウロア、もう飛行機に乗ったってさ」 「ん」  それにしても相変わらずのシュートへの愛情に笑う。せっかくだからオーサーたちとクレイグにも来ないかって連絡してみたけど、元気にしてるならそれでいい、だと。 「全員集合はまた年末かな」 「……ん」  部屋の電気を落とすとシュートがくっついてきた。まだまだ暑い季節だけど、もう慣れたモンだ。 「あ、こらあんま噛むなよ、マウロアに見られたら面倒だから」 「んー」

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