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番外編◆初期構想の世界のBOX 25 ※微R18

【初期構想の世界のBOX 25】 ▼独占欲と愛着  困ったことに、シュートの情緒不安定は簡単には|治《おさま》らなかった。 「シュート、俺また今日から仕事なんだよ……また週末来るから、な?」 「……」  月曜の朝、いつも通りリディアと一緒にアジトを出て行こうとしたんだけど、出口の扉の前で抱きつかれてどうしようもない。オーサーが言うには、一度"自分のモノ"と強く感じてしまったせいで、今は離れ|難《がた》いんじゃないかと。そのうち慣れて落ち着くだろうから、気にせずお前は自分の生活を優先しろって言われてるけど……。 「わっ」  頬を舐められて、甘噛みされて、服に手を突っ込まれる。昨日も一昨日も、ほとんど飲まず食わずで飽きるほど抱き合ったってのに。というか、正直、後半の記憶がほとんどない。その……"汚し"ちまったからマットレスは買い直してもらう羽目になったし、やめろって言っても、寝てても犯されてた。おかげで途中からもう夢なのか現実なのかわからねえ感覚の中でずっとセックスしてたんだ。 「……」  よく生きてたなと苦笑する。おかげさまで首元は鬱血痕と噛み跡だらけだから、しばらくネックウォーマーが外せそうにない。来週、またつけられそうだし。 「えへ、シュート甘えてる。 ちゃたろーにさわりたいみたい」 「シュート……」  いやだ、離れたくないって、こんなにも全身で訴えかけられたら気持ちも揺らぐ。でも、俺はこれからもずっとコイツと一緒に生きていくつもりなんだ。自分の生活をきちんと立てておかねえと、それも叶わなくなる。 「……いってくる。 週末にまた来るから」  そうして後ろ髪を引かれながらも、俺は仕事に戻った。  ***  首のアザを同僚に|揶揄《からか》われながらソワソワと5日間の仕事をこなし、ようやく金曜の夜がやってきた。定時ですぐにタイムカードを切って大慌てで帰り支度をする。 「茶太郎、お熱い相手と週末中パコパコすんのか?」 「来週、膝が笑って働けねぇとかやめろよ」 「うっせーんだよ」  心配で仕方ないんだ。オーサーには電話で「問題ない」って言われてるけど、何年か前……出逢った頃みたいに、また不安定になってンじゃねえかって。 「あ、シャワールーム使っていいか?」 「はーいご勝手にどうぞ」  スラムに着くとリディアとシュートが来てくれた。スクーターを停めて真っ先にハグをする。 「シュート! ごめんな、寂しくなかったか?」 「ずっとさみしそうにしてたよお」  人の罪悪感を抉るなよな。とにかくここで立ち止まってて、また絡まれたら損だ。ひとまずアジトに行こうって声をかけて、またスクーターに跨った。  一旦、2階のリビングにいるらしいオーサーに顔を見せてから……と思ってたが、アジトに着くなりグイグイと地下に連れ込まれて、寝室のマットレスに押し倒された。 「シュート、こら、うわっ」  服をビリビリに破かれて胸元を嗅がれる。興奮した鼻息と唸り声が部屋に響く。 「待て、焦るなって、シュート!」  ズボンもベルトごと引きちぎりそうな勢いだから、慌てて自分で脱いだ。今までに何本も壊されて、もうストックが無い。 「逃げねえから、分かった分かった」  まあ、こうなることもあり得るとは思ってたから、工場のシャワールームで"準備"は済ませておいた。まじ何やってンだと思うが、相手がこの野生動物なんだから仕方がない。 「は、あっ、う……っ」  無遠慮に全身を舐められて呻いてると扉がノックされた。 「茶太郎、そいつも力加減はもう覚えただろう。 俺は3階で寝るから、もし死にそうになれば電話を鳴らせ」 「し、死にそうって……バカ言うなよ」 「虎は発情期、日に20から最大100回程度交尾をするらしい。 まあ、満足するまでせいぜい付き合ってやるんだな」  飲み物を部屋の前に置いておくぞ、と言い残して気配が去っていった。ひゃ……100回!?いや、コイツは虎みたいだとはいつも思ってるけど、虎ではねえし。でも先週末は金曜の1回と、土日の分も合わせたら20はやってた、かもな。記憶ねぇから定かではないが。 「シュート、絶対にイヤとかじゃねえけど、その……今週はもう少し、お手柔らかに頼むな」  通じてんだかどうだか、さっさとヤるぞと言わんばかりに首元に噛みつかれて、俺はまた月曜までの軟禁生活を覚悟するのだった。

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