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第22話 神様が来た

「ヴェルヴァラント、久し振り~」  玉座の間に入ると、全体的に明るい色実の少年が無邪気な笑顔で走り寄ってきた。  魔王に抱き付こうとする少年の頭を鷲掴みにして阻止した。 「出会い頭に抱き付かない。あと、名前呼ぶなって、いつも言ってるよね?」  魔王の隣で、シャムルが驚いた顔をしている。 「今のが、魔王様の真のお名前……」  感動しているシャムルに物申したいが、今は目の前のガキが優先だ。 「やっぱり従者に名前、教えてないんだぁ。元人間の奴隷なんか、信用できないもんねぇ。真名なんか教えるわけないよねぇ。使い物にならなくなったら喰う、補助食みたいなものでしょ」  ガキの目が確信的にニタリと笑んだ。  魔王は息を吐いた。 「最近、仕入れた奴隷は質がいいから長持ちしそうだよ。特にシャムルには核を与えているから、もう魔族だよ」  少年の目が、ちらりとシャムルに向いた。  シャムルが丁寧に頭を下げる。 「ふぅん、如何にもヴェルが好きそうな感じ。小さくって可愛くって小利口で器用そう」 「魔王はハネシア、好きじゃないけど」 「えぇ? 僕の話みたいに聞こえちゃったぁ? 側近面してヴェルの隣に立ってる従者の話をしたんだけどなぁ。その子と僕って似てるんだぁ」 「似てないし、シャムルはハネシアが言った感じとは違うよ」  だから嫌なんだよなぁ、と魔王は頭を抱えた。 「ハネシア様……。もしやライト教が敬う神、ハネシア様ですか?」  シャムルがいつもの顔でハネシアに笑いかけた。 「そうだよ。愛と平和の神ハネシア。最近まで人間だったんなら、聞いたことあるよね。大陸の国々の八割はライト教で国家統治しているんだから」 「はい、よく存じ上げております。我が母国、リンデル王国もライト教の敬虔な信者でした」 「へぇ、お前、リンデルの出身なの、ふぅん」  ハネシアの目が笑みに歪む。 「なぁ、魔王様。ハネシア様が奴隷を一体、譲ってほしいんだってさ。天使不足だから作り直してぇんだって」  ランドールがガイルとスカラを連れて玉座の間に入ってきた。  首輪を付けて、犬のように鎖で引いている。  この風景もデフォになりつつあるなぁと思った。 (何のかんの、最近のランドールはガイルとスカラと遊ぶのが好きだねぇ)  更にそこにヘルが混ざる。  ヘルが混ざるとスカラの興奮がMAXを突き破るので、ランドール的に楽しいらしい。 「だったらユーリをあげるよ。多分、魔王軍に輪姦されているから連れて来て……」 「あぁ、ヘルに持って来いって言っといた。ん?」  ハネシアがガイルとスカラに駆け寄る。 「わぁ、犬みたいで可愛いなぁ。いいなぁ、こういう奴隷」  ハネシアがスカラの頭を撫でながら乳首を摘まんでこねくり回している。  スカラの目が悦った。 「ぁ、ぁ……、はぁ、はぁ……、いぃ……」 「あはは、喘ぎ方まで犬みたい」  ハネシアが自分の股間をスカラの顔に押し当てる。  スカラが当然のようにスリスリして、ハネシアのペニスを咥え込んだ。 「ぅわぁ……、きもちぃ。流石、ランドールのフェラ調教、最高だね」 「いんや、スカラは最初からフェラ上手かった。慣れてんだよ、コイツ」  ランドールに尻を蹴られて、スカラの顔が嬉しそうに悦った。 「な? 優しくすると萎えた顔されるから、うっかりできねぇ」  ランドールが珍しく微妙な顔をしている。  アメムチ使い分けのランドールだから、難しいんだろう。 「えー、いいねぇ。僕好みだけどなぁ。壊れるまで虐め倒したいなぁ。でも、天使の見た目じゃないよね」  スカラはガチムチの雄々しい雄っぱい体型だから、確かにあまり天使的ではない。 「ぁ……、イキそ……、神力、飲ませてもいい?」 「いいよ」  ハネシアの腰が震えて、射精した。  いつもの如く飲み込んで、ちんぽの先まで丁寧に舐めとる。 「や……、待って、イった後に舐めるの、ダメ……んっ」  また腰をビクビクさせて、ハネシアが目をぎゅっと瞑った。   (エッチしてる時の顔とか仕草は可愛いのになぁ。本当、残念な神様だねぇ)  一言話し出すと、面倒しかない。  だから魔王はハネシアが苦手だ。 「はぁ……、気持ち良かったぁ。神力飲んでも変化ないね。魔印が濃いのかな」  ハネシアがスカラの首を確認している。 「神力を飲むと、変化があるのですか?」  シャムルにこっそり確認されて、魔王は身を寄せた。 「魔族に転嫁してない子とかが神力飲んだり浴びたりしちゃうと、浄化されて人に戻ったり天使化したりしちゃうの。ハネシアは勝手に神力飲ませて奴隷お持ち帰りする常習犯なんだよ」  天上の天使不足も深刻なのだろうが。  魔族不足も深刻なので、やめてほしいものだ。 「今回は分けてって言ってきただけマシなんだけどねぇ」  浮かない顔の魔王をシャムルが覗きこむ。 「分けてって言ってきたってことは、それ以上、お持ち帰りする気満々なんだよ」 「つまり、ユーリ以外にも連れて帰りたがると?」 「多分ねぇ。まぁ、今回はみんな魔印が濃いから、大丈夫かなって思うけど」  神力を流し込み神族にして、既成事実を作って連れ帰るのが、ハネシアのいつもの手段だ。  ハネシアが魔王とシャムルに目を向けた。 「良い奴隷が増えたね、ヴェル。でもちょっと人間の密度、高過ぎじゃない? 食べちゃう前に僕が引き取ってあげるよ」  ハネシアがシャムルを指さした。 「それをちょうだいよ。ヴェルが側に置いてるなんて、よっぽどお気に入りなんでしょ? どんなお人形なのか、興味ある。欲しいな」 「ダメ。お気に入りだから、あげない」  魔王の即答に、ハネシアが目をぱちくりと瞬かせた。 「そんなに気に入ってるんだ。益々欲しい。魔族の核が根付いたなら、すぐに天使に転嫁できるよ。僕と天上に行こう」 「嫌です」  シャムルがにべもなく言い切った。  ハネシアの顔から笑みが消えた。 「勘違いするなよ、元人間。お前に拒否権も決定権もない。決めるのは僕とヴェルだ」  冷めた目で眺めていたシャムルが一歩後ろに下がり、頭を下げた。 「これは失礼いたしました。分を弁えぬ発言を謝罪いたします」 「うんうん、それでいいよ。お前は僕らの決定に従っていればいいから」  ハネシアがニコリと笑んで魔王に向き直った。 「魔王様……」  魔王の陰に隠れて、シャムルが話しかけてきた。  どうやらシャムルには作戦があるらしい。 「ふむふむ、いいよ。面白そうだから、やってみようか」  シャムルはいつも面白い作戦を思い付くなぁと思いつつ、ちょっと憂鬱だったハネシアとのやり取りが楽しくなった魔王様でした。

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