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第26話 穢れた天使

「さてと、困ったねぇ。どうしようかなぁ」  魔王は呆れた息を吐いた。 「あは、あへ……、ぁ、ぁっ、きもちぃ……俺は、魔王しゃまの、性玩具、性奴隷、れしゅ。壊れるまで、遊んで、くらはぃぃ」  目の前で一人の勇者が、全裸になって自ら腰ヘコして快楽を乞う。  魔印と淫気で正気を失いながらも、奴隷の契りを言葉にした。 「魔王軍輪姦用の印も付けましたし、性玩具として回収させればよいのでは?」  シャムルが不思議そうに首を傾げた。  青年の手首足首には、輪姦用の黒い魔印を施してある。   「それは、そうなんだけどねぇ」 「何か問題でも? 前の玩具は早々に壊れましたし、屈強な戦士と勇者なら長持ちして、皆も喜びます」  全裸で腰ヘコしている勇者の後ろに突っ込んでいるのは、同じパーティの戦士としてやってきた青年だ。  同じように淫気に酔って、ひたすら勇者を突きまくっている。 「トビアス……、トビー、愛してる。やっと二人で愛し合える時が来たんだ。可愛い、私のトビー」  戦士が突っ込みながら勇者に愛を囁き、キスをする。 「もっと、シて。もっと、ほひぃ、れふ……、魔王様ぁ」  トビーと呼ばれた勇者は、もはや誰に突っ込まれているのかも、わからなくなっているようだ。 (それに比べて、戦士の子は、普通に意思があるじゃん。気持ち良くなってるだけだね。それに、この感じは……)  戦士にも輪姦用の魔印を付けた。普通ならトビーと同じように正気を失い、性に狂うはずだ。  視線に気が付いたのか、戦士が魔王を見上げた。 「私は今日から魔王様の性奴隷、性玩具です。壊れるまで遊び倒してください。私にトビーを犯させてください」  とても良い笑顔で契りを唱えながら、おねだりをされた。  魔王は、軽く頭を抱えた。 「もしかして、アレイラかな? その、トビーとかいう子から、アレイラの神力の残滓を感じるね」  シャムルが顔色を変えた。  魔王を庇うように前に出た。 「トビーは、魔王様に遊んでいただくためにアレイラ様が厳選した玩具です。小さな村で牛を追っていたトビーに、勇者となり魔王城に向かうよう天啓を与えました」 「何してるの、アレイラ」 「いつもハネシア様がご迷惑をおかけしているので、お詫びの品だそうです。本当は秘密にしなければいけないので、アレイラ様には私が話したこと、内緒にしてください」 「そういう気遣いは要らないって、何度も話したのになぁ」  アレイラは時々、人間をかどわかして魔王城に送り込んでくる。  食料か性玩具の贈り物のつもりらしい。  面倒だから普段は気が付かない振りをするのだが。  今回は、目の前にいる戦士のせいで、無視できない。 「それで、君は何なの? どうして、その子……、トビーだっけ? と一緒に来たの?」  戦士の青年からは、天使の神力より、人間の気を感じる。  だから、魔印を付けた。  戦士がトビーに突っ込んだまま、小さく礼をした。   「申し遅れました。私の名は、シリウス。元小天使でございます」 「元、小天使、ということは、堕天使ですか?」  シャムルの問いかけに、シリウスが頷いた。 「アレイラ様の命で、トビーの監視のため地上に降りました。隣で彼の成長を見守り、魔王城に向かわせるまでが私の役目でした。しかし、その過程で、私は本気でトビーを愛してしまったのです」 「あ、なんかもう、全部分かった」  魔王は、今度は強く頭を抱えた。 「フィオナ、ランドールにユーリを天上に送る準備して、って伝えて。ついでに手伝ってあげて」 「はいです、魔王様~」  良いお返事をして、フィオナが玉座の間から飛んで行った。  フィオナの姿を見送ったシャムルが、魔王に向き直った。 「申し訳ありません、魔王様。私には事情がわかりません」 「あぁ、うん。そうだね。今回は魔王も油断しちゃったなぁ」  トビーを愛おし気に犯し続けるシリウスを、ぼんやり眺める。 「シリウスは堕天使になるために、魔王の魔印を受け入れたんだよ」 「それじゃぁ、シリウスが堕天使になったのは、ついさっき、ということですか?」  シャムルが驚きの声を上げた。   「でも、魔王城に入ってきた時点で、シリウスから神力など感じませんでした。まるで人間のような気を纏って……」 「そうなんだよねぇ。人間のような気、つまり、穢れた気を纏っていたんだよね」  人の気は魔族とは違った程度に穢れている。  魔族が黒なら、人間はグレーといった具合だ。  神力に穢れはないので、纏っていればすぐに気が付く。 「仰る通り、穢れるために私は人間を幾人か喰っております。トビーに群がる命知らずの不遜な輩や、叶うはずもない恋心を抱く馬鹿な女などは全員、始末しましたので」 「なるほど。殺すだけじゃなく、喰っちゃったかぁ。穢れが強すぎて神力が隠れたね」  天使が人間を殺すだけでも、穢れるには充分だ。  喰ったとなると、神力など穢れで掻き消える。 「食うだけでは堕天使になれませんでしたので、魔王様に魔印を付けていただきました。常闇の神の魔力は素晴らしいです。これで私はトビーと同じ魔王様の奴隷です」  シリウスが、うっとりとトビーの頬を撫で上げた。  ねっとりとした手つきで、何度も撫でる。  その度に、トビーの体がビクビクと震えた。 「確信犯か。やられちゃったなぁ」  とりあえず、シリウスのトビーへの執着は感じ取れた。  シャムルが魔王城に来た時と似た周到さを感じる。 「常闇の神、とは何ですか?」  シャムルが魔王に問い掛けた。  顎を掴み上げて、シャムルの唇に噛みつくようにキスをする。  舌を深く絡めると、シャムルから喘ぎが漏れた。 「んっ……ぁっ、んぅっ……」  いつもより声が可愛くて、勃起しそうになる。  口内を何度も舐めあげて口を離すと、蕩けた顔のシャムルが魔王を見詰めた。 「それでね、ただでさえ天上は天使不足なのに、魔王が小天使を堕天させて奴隷にしちゃったなんて知れたら、あのハネシアが黙っているわけないでしょ?」 「……え? あぁ、えっと……、そう、ですね」  キスの余韻でぼんやりしているシャムルが、フワフワな返事をした。  その顔も可愛い。  常闇の神については、誤魔化せたっぽい。 「それで、取り急ぎユーリを天上へ引き渡す、と」 「こちらから出せる奴隷を、一応は準備しておく感じ。だけど、ハネシアはもっと別の要求をしてくるだろうから、備えないとね」 「別の、というと?」  魔王はシャムルを指さした。 「私、ですか?」 「前に来た時、やけに執着していたから、多分ね」  魔王的にシャムルは、ここ数百年の間でも稀なお気に入りだ。  ハネシアにあげる気にはならない。 「ちなみに、シリウスは、トビーと一緒なら何でもいい感じなの? それとも天使が嫌だったの?」 「天使に不満はありません。アレイラ様は良い上司です。私はトビーを愛しているだけです。トビーを貰えるなら、同じでいられるなら、どこでも何者でも構いません」 「だよねぇ。わかった」  だから、魔王の性奴隷になれて、こんなに喜んでいるのだろう。  話している間も、シリウスはトビーに突っ込んだまま、腰を振り続けている。  感じすぎてアヘ顔のまま意識を飛ばしているトビーを、愛おしそうに犯し続けている。  一方通行の重たくて歪んだ愛だなと思った。 「面倒だけど、仕方ないか」  先々を考えると溜息が止まらないが、可愛い側近のためなら仕方がない。  悪いことばかりでもないかなと、シャムルを想ったりする魔王様なのでした。

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