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四聖病院
大学病院並の大きな建物に、広大な庭には様々な樹木が植樹されている。
中庭には入院患者なのか、外気を浴びる姿がリラックスしているように見て取れ、都心を少し離れただけなのに、これほどの敷地面積を持つ四聖病院は、治療を求める患者にとってのオアシスのように思えた。
診察の受付時間は過ぎていると言うのに、患者の数が途絶えない。忙しなく働くスタッフの人数もかなりいるのが、ガラス張りの向こうに映る景色を見ていてもわかる。
「うちの病院もそれなりに忙しいと思ってたけど、四聖の方がヤバいな」
ここで働くのは大変そうだなと、スッタフに同情の視線を向けていると、背後から駆け寄る足音と息急き切る声が聞こえてきた。
「な、那生さん、すいません遅れました」
全力疾走したのか、周が横っ腹を押さえて、苦しそうに肩で息をしている。
「大丈夫、俺が早く来すぎたんだ」
「いや、でも俺のためなのに……。本当に今日はすいません」
「もういいって。それよりどうしよっか、取り敢えず受付に行ってみる?」
那生が正面玄関のガラス越しに中を指差した。
「正攻法じゃないと怪しまれますよね。でも、また追い返されてしまうかも」
「忙しそうだもんな。そうだ、患者が減るまで院内を散策しようか。俺らも同じ患者に見えるだろうし」
「……見えますかね。俺、めっちゃ健康そうじゃありません?」
確かに……。
若くて健康的に日に焼けている周は、どう見ても病院とは無縁な風体だ。
「ハハ、周君は病気知らずって感じだな。でもいいじゃん、俺の付き添いってことで。それに、院内を見て回っている時に、もしかしたらばったり会えるかもだしな」
躯体の割に周は気が小さい。
あれこれ考えて踏み出すことを恐れるくせに、こうって思ったことには、後先考えずにまっしぐらに向かう。
子供の頃、伊織と仲良くなりたくて、めげずに声をかけ続けた男と同じ人間とは思えない。けれど、その純粋さと素直さは好感を持てる。
高校の時、素直に自分の気持ちを伝えていたら、心底からの親友でいられたかもしれない。周を見ていると、自分の方がずっと臆病者だ。
知り合って間もない間柄だけど、周に協力してあげたいと思ってしまった。
「俺は周君の思う気持ちを応援したいって思っただけだから。さあ、行こうか」
周の手首を掴むと、自分より大きな体を引っ張ってロビーを横切った。
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