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第2話
『この国は60年ほど前から、全世界との交流を経ちました。いわゆる鎖国状態にあります』
『その一番の理由は、研究情報の秘匿でしたね』
『ええ。我が国の科学や医療、それらに付随する技術は世界一の水準を誇りますからね』
『だからこそ、他国からの諜報活動家に狙われた、と』
『鎖国のきっかけとなった直接の原因ですね。もちろん、他国が隣国へと侵攻を繰り返す、そんな時代だからこそ、閉じるという防御策を選択した、というのも一因ですが。
しかし、いくら鎖国をしようとも、失敗に終わった国は数多く存在します。その点、我が国の利点はその地理にありました。島国であり、激しい潮流が、渦をまくように国を取り囲んでいます。
それでも、他国からの侵入者を完璧に防いでいるというわけではありませんがね』
『そこで、モリさんが設立し、経営している「楽園事業計画」が出てくるわけですね』
『ええ、鎖国下でも、我が国の教育水準を下げる訳にはいかない。設立のきっかけは、そんな単純なものでした。
「楽園」なんて、随分と詩的な名前だと思われたでしょう?私ではなく、事業の相方が名付けたんですよ。
かつての政権交代時、いわゆる鎖国の瀬戸際であった頃、国は混乱に見舞われました。暴力に物を言わせた事件も多かった。そこで親を失った子や都市郊外で家も持たずに暮らす子供が増えたわけです。
だからこそ、彼らを集め、教育する場所を作ったんですよ。「この国を、楽園へ導くように」。未来を担う子供たちがそう育つよう、願いが込められているわけです』
『その事業のおかげで、我が国の子どもたちの学力は、高水準に保たれていると言っても過言ではないと』
『そうですね。ですから、私も事業員たちには感謝しているんですよ』
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