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第11話

「リンさん。部屋まで破壊すると処理が面倒になります」 死体を消し、施設からやってきた侵入者の痕跡も消す。それには専門の部隊がまたいるらしいが、詳しいことをリンは知らない。 セトに咎められても、反省もなければ反発もない。リンはそのまま車に戻った。自分の「仕事」はもう終わった。 「これは施設共有の車両ですので」 後部座席に乗り込む前に、一枚布を敷かれた。これでは汚物扱いだ。そうか、人の血は汚いんだった。 リンの記憶では、仕事を終えた後に労いの言葉をかけられたことは、兄を除けば誰からも、一度もない。 むしろ、車でも帰ってきた施設でも、汚物のような扱いだ。 「「仕事」帰りの「弟」か」 「見ろよ、あの血。全部返り血らしいけどさ」 「人ひとり殺して、血まみれになって、顔色ひとつ変えないんだよな」 「とんだ「楽園」の「人形」だ」 廊下のどこにも、慟哭していたもう13番はいなかった。 リンには誰にも声をかけず、かけられず、ただ歩いていく。その間にも、耳は潜められた声を拾っていく。 人形。化物。怪物。汚物。 全部、アンタたちがここで作ったくせに。
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