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第17話
「……リンさん」
いつから入ってきたのか、扉は開けられ、部屋の入口にはセトがいた。
「しっかりしてください。感情に支配されるのではなく、感情を支配下に置くんです」
「わかってるよ、そんなこと!」
分かっているのにできないから、こんなに苛ついているんだ。
「……澱んでいますね」
「変な言い方しないで。気持ち悪い」
自分は、ああ言えばこう言う人間だっただろうか。こんなにも他人に食ってかかっていただろうか。物心ついたばかりの頃なんてもう記憶にない。考えれば考えるほど、何かを言えば言おうとするほど、自分という存在が不安定になっていく。
「今日は部屋の外に出ていただきます」
「また検査する気?そっちも飽きないね」
「検査といっても、リンさんのではなく、機械のですが」
そう言ってセトに連れてこられた部屋には、中央に大きな機械が鎮座していた。何これ、とリンが口を開く前に、よく分からない管を体中につけられていく。
「施設で作った装置ですよ」
訝しげな顔までよく分からない機械で覆われ(化学物質の匂いだろうか、油臭かった)、リンの表情は見えないはずなのに、セトはリンの先回りをして答える。
「12番と13番、そして貴方たちのような「兄弟」の例もあります。適合者が見つかるまで澱みを洗い流す方法が必要だった。そのための装置がこれです」
そこからはさしたる説明もなく、彼は淡々と装置の電源を入れた。
自分の外側で何が起こっているかは分からない。
しかし内側で起こっていることははっきりしていた。
兄との記憶がよみがえってくる。
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