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第40話

どれほど思考が少女漫画の主人公に寄ろうと、どの道、自分たちの存在意義はそこにある。リンが体液を経由して感情を与え、ロウがそれを受け取る。 「兄弟」なんて名前がついているから、勘違いしそうになっただけだ。ふたりは同じ、施設の中に閉じ込められた被験体。そう言い聞かせれば、むっつりどころか、自分の胸を揺らす感情さえなくなる。 「はいはい、いつものな」 唾液を移すことは一度拒んだ。それ以降ら彼は律儀に血液からの摂取を守り続けている。 間髪おかずに、手がリンの衣服にかかった。彼の手がどんどん釦を外していく。外された時の音は、合成樹脂と彼の指先が触れる軽い音だけ。そこにあるのは肩を露出させる目的にすぎないはずなのに。 節ばった指が、布1枚を隔てて肌を撫でていく。彼のかさついた指先が、噛み跡の残った爪が、自分の皮膚を擦る様子を想像した。自分の頭の中で展開されているだけの光景なのに、思わず生々しいと思ってしまった。 「……っ」 やっぱりやめて、と今すぐにでも彼の手を掴んで止めたい気持ちにかられる。かと思えば、早く肩に歯を立ててほしいとも思う。そして何より、そんな自分が恥ずかしい。 「……止めだ止め」 「え……?」 釦を中途半端に、胸の下まで外したまま、彼は手を止めていた。どうして。俯いていたリンが顔を上げると、彼が頬を優しくぺちぺちと叩く。冷たい。ということは、自分の頬が今、火照っているということだ。 「ぷるぷる震えてるヤツを襲う趣味、オレにはねーの」 おしまいとばかりに、彼は背を向けて読書に戻ろうとする。待って。たしかに怖いような、心もとないような気持ちはあったよ。 でもそれは、決してロウに触れられることが嫌だったわけじゃない。 「お願い……待って」 ロウの袖を掴んで引き止めたのは、離れがたかったからだ。もっと自分と向き合ってほしかった。頬だけじゃなくて、色んなところに触れて、自分の熱を確かめてほしかった。
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