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第45話

「値、上昇しています」 案外、錯覚でも無かったのかもしれない。かといって、じっとしている以外に自分にできることはない。羊の数でも数えていればいいのだろうか。しかし検査中に眠ることは禁止されている。 「こら、5番、勝手に立つな!」 パイプ椅子の軋む音がした後、足音が近づいてくる。 「退屈だろうが頑張れよ。待ってっから。あとで一緒に飯食おうぜ」 職員たちには聞こえない程度の小声だった。よかった。彼は自分を笑ったわけじゃなかった。待っていると言ってくれた。 また足音が響き、扉の開く音がする。きっと部屋を出ていったのだろう。その後、騒がしそうにばたばたと追いかける音もあったから、きっと許可もなしに。 深呼吸しているうちに時間が経ち、気持ちもいくらか落ち着いてきた。 「数値、安定しました」 よかった、これで検査も終わると思ったところに、また騒がしい生活音が増える 「だーかーらー!腹減ったんだって!食堂の方ちらっと見ただけだろ!?なんでそれが連行なんだよ!」 「もともと、滞在予定の検査室を君は抜け出している」 「だって暇だろうが!腹減って暇だったら耐えらんねー!検査めちゃくちゃにしてやろうか!?どうせいつものくだらねー反省文ではい終わりだろ?このクソ施設が!」 結局ロウは捕まってるし。しかも普段ひとりでは行かない食堂でって。どれだけお腹が空いていたんだか。大人しく連行されているということは、空腹と言ってもまだ機嫌が悪いほうじゃない。自分を、ちゃんと待っていてくれた。 機械がまた無機質な警告を出す。心が揺らぐ音がした。
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