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第46話

結局、ロウはあの後また二度脱走をはかり、二度目は捕まることなく姿を見せなかった。 食堂で目撃されたと職員が話しているのを聞いたから、食事を部屋に持って行って、本でも読みながら待っているのだろう。不思議と先に食べている姿は思い浮かばなかった。 研究員たちはリンが残した数値を見て、何かを話し合っている。機械の描く不器用な折れ線は、いつもとは違っていたのだろう。 「数値の揺らぎが……」 「やはり5番の影響で……」 「感情の移行はいつも通りに……」 リンは繋がれていた管をゆっくり外し、話に夢中になっている職員の方を向く。 「だったら、「兄弟」を解消した方がいいんじゃないの」 研究員たちが、特にセトが、驚いた目をこちらに向けた。今までは、職員が装置を外すのを大人しく待っていた。リンが自分から彼らに話しかけたのも初めてだった。 「ロウに会うと数値が高くなるなら、接近禁止にする方法だってあるでしょ」 彼といることは嫌いじゃないのに、自分でもどうしてこんな提案をしているのか分からない。でも、今言っておかないと、彼らが自分とロウを組ませたがる理由を聞いておかないといけない気がした。
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