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第62話
はっきりとした映像を脳内に描いた後、雑音とともにロウの記憶は混濁した。
感情が記憶ではなく思考へと切り替わりなだれ込んでくる。
彼には、明日があるんじゃなかったのか。
自分と違って、とてもいいやつだった。
正しいことをまっすぐに正しいと信じ屈託なく行ってみせる。そんな眩しさがいつも彼を照らしていた。
なのに。どうして。
ロウの感情が、摂取した誰のものかも分からない人格が、リンの中で混ざり合う。
彼を真っ赤に染めたのは誰だ?
僕だ。
違う。
オレだ。
彼は、明日も生きるんじゃなかったのか。
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