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第99話
今まで夜更かしなんてしたことないからリンは初めて知った。夜はびっくりするほど長い。彼は見回りの時間を把握しているらしく、いつもある程度ここで本を読んでから部屋に戻るらしかった。続きを両腕に抱えるだけ抱えて。
「お前も、気になるのが持って行っていい。誰も管理してねぇし」
「うん」
けれど色とりどりの表紙は妙に目移りしてしまって、リンは結局ロウが読んでいた少女漫画の続きを手に取った。
「お前の好きそうな小説とかもあるけど」
本なんてほとんど読んだことないのに。どうして彼は自分が好きそうだと思ったんだろう。性格から好みでも推測したんだろうか。その間は、ずっと自分のことを考えてくれていたんだろうか。
「じゃあ、それも読む」
また少女漫画を読んだら変な顔になりそうな気がして、勧められた小説の頁をぱらぱらとめくってみる。
自分には少し難しかった。主人公の感情の動きに、まだ理解できないところがあったから。
でも、持ち帰って何度も読もうと思った。彼が勧めてくれた理由の想像がつくまで。
しばらくは椅子に腰掛けて黙々と本を読んだ後、「そろそろ行くか」とロウは立ち上がった。今日彼が選んだ本は3冊ほど、片手で持てる量だけだ。
「ほら、帰るぞ」
何気なしに差し出された片手を、リンは躊躇いなく取った。
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