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第112話

「お前は、オレの兄にでもなったつもりか?」 冗談じゃない。以前リンにも言ったが、コイツとは絶対合わない。そこまで考えてしっかり想像していることに苛ついた。 「……計画を立ててる。リンとお前が施設の外に出るための計画だ。そうすれば、オレの願いが叶ったも同然だ」 コイツら兄弟が、綺麗なままで生きていくという願いが。こんな世界らぶっ壊してやるっていうこじらせた願いが。 「君の願いなのに、僕たちが叶えるの?不思議だね。君も僕と同じなのかな?感情をもらいすぎて、どれが本物か、自分のものか、わかんなくなっちゃった?」 「オレは、自分の願いだけは分かってるつもりだよ。アンタら兄弟の影響で。狂わずに済んだから」 「狂ってないなんてどうして分かるの?全部が夢かもしれない。これは、どこかの虫けらがみているような取るに足らない夢だよ」 「そうだったとしても……綺麗な思い出だけは、ちゃんとここにある」 小鳥のような澄んだ声。兄を守ると誓う声。それで初めて、理想ばかりで揺らいでいた自分の中の家族像を固めてもらった。無条件に愛し愛される関係は、幻なんかじゃないと思えた。 ロウは彼を掴んでいた手を離し、被りを振る。オレは自分の話をしたいんじゃない。彼ら兄弟の今後の話をしたい。リンのこれからの話がしたい。 兄弟ふたりで、幸せにこんな腐った施設を出て行けるように。 「お前はアイツの兄だろうが!分からねぇなら何回だって言ってやるッ!アイツは夢の中で泣いてたんだぞ!?ごめんって……兄さんごめんって!」 あの時、ロウは咄嗟に実の兄の振りをした。うなされていた彼は、穏やかな寝息を立て始めた。 「オレじゃだめなんだよ……ッ!オレだってなれるもんならなりたかったさ!アイツの兄さんとやらに!」 「君は……僕とは違うや」 リョウは、それきり黙り込んで何も言わなくなった。

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