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第114話

手持ち無沙汰になったリンは、棚に並んだ本を目で追っていく。お馴染みのの少女漫画が並べられている箇所だ違和感に気づいた。巻数が入れ替わっている。ロウが読んだ後無造作に突っ込んだのかもしれないが、リンにとってはなんとなくそわそわする並びだった。 巻数順に並べ直そうと思って手を伸ばす。何かがひっかかっている。力を込めると外れた。こんなことが、前にもあった気がする。棚にさりげない違和感を覚えたことが。当時の記憶はぼんやりしているが、日記帳で振り返った出来事としてはよく覚えていた。あれは、「仕事」の時。兄がおかしくなる直前の―― 「わわっ」 取り出した少女漫画の入っていた棚には、板で塞がれた底があった。ぱっと見ただけでは分からないよう、少女漫画の背で隠れるように細工がしてある。といっても突貫工事で、蓋となっている板はすぐに外れた。 そこには、ぐちゃぐちゃになった紙が入っている。汚れないようにビニールに包まれているのに、形などどうでもいいようにつっこまれている。読めればあとはどうでもいいというように。 その考え方には覚えがあった。ロウは、本は読めればいいと、その扱いには特に気を配っていなかった。 彼が持ってきてここに隠したのだと仮定して、リンは資料を読むことにした。

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