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第125話
逃がさなきゃ。
逃げなきゃと考えるよりも先に、リンはふたりの姿を思い描いていた。今の自分には、大切な兄がふたりいる。彼らを処分なんてされたくなかった。
でも、どうやって?
しかし分からないもここから逃がさない限り、「兄」という存在が助かることは無いんだろう。
今になってようやく、職員が噂していた言葉の真意がわかった。
「兄」の末路なんてわかりきっているだろうに。
彼らは「弟」という感情のない兵士を作るための生贄で、作戦立案や敵の暗号解読などで役立ったら、妙な反抗を見せる前にお払い箱になる。自分から狂って死んでくれれば手間も省ける。
「……嫌だ、そんなの」
自分のことじゃないのに。そんな考え、非効率的なのに、全てに差し置いてそう思った。彼らのことなのに、勝手に。
ふたりの兄には、この施設だけの世界は狭すぎる。
兄さんは野に咲く花のように風に揺られているのが似合う。
ロウは獣のように空の下、地を駆けるのが似合う。
たとえそれが、彼の過去から来ている自棄でも。施設や出資者への反抗だったとしても。
彼らには、自由が何よりも似合っている。
「やっと読んだか」
そう思った時、後ろから声をかけられた。
「ま、読むように置いといたから、当然だよな
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