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第126話
振り返ると、いつの間にか起きていたロウが後ろに立っていた。少し距離を置いて。
いつの間に起きていたんだろう。最初から狸寝入りだったのかもしれない。
「どうして……」
「オレが読んでほしかったから」
いつもなら、相変わらず勝手なことを……と流せたかもしれない。でも戯れに見せるには危険が伴う資料だし、なにより彼の声がいつもと違った。低く唸るような声。
「こうでもしないと、お前はここに囚われたままだと思ったからだ」
彼が僕の両肩を掴む。まっすぐ目を合わせる。真剣というより必死なんだと思った。
「逃げろ、こんなクソみてぇな場所から」
「でも、兄さんが……」
「そいつも一緒にだ。お前ら兄弟でここを出ろ」
「だけど……!兄さんはもう、僕のことがわからなくて……」
「分かる」
でもでもと駄々を覚えたての子どものように渋るリンに、ロウは彼らお前ら兄弟でと言った。
「まだアイツには理性が残ってる。確かめてきたんだ。狂ってるように見えても……アイツは自分から扉を開けたよ。いや、たとえ狂ってたって一緒に逃げればいい」
計画はずっと立ててきたんだと彼は言った。ただ、実行する踏ん切りがつかなかっただけで、とも。
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