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スモーキーミルク【21】
八尋がガーデニングを始めた週、望は忙しそうだった。
水曜の朝は口数も少なく出勤して行き、帰宅も深夜零時ギリギリ。その後も木曜、金曜と同じような状況で、土曜はまた休日出勤だった。
さすがに土曜の夜は夕方には帰ってきて一緒に夕食を食べたが、疲れているようで元気がない。何より八尋が心配になったのは愚痴を言わないことだった。
「仕事、大変そうだな」
いつもなら望から『聞いてくださいよ〜』と泣きついてくるのにそれがなく、八尋は自分から望に尋ねた。
「ええ、ちょっとトラブル続きで……」
「そっか。第一営業部、みんな残業してんの?」
「一部ですかね」
「そうなんだ……」
会話が続かない。一問一答で尋問のようになってしまう。
同じ会社とは言え部署は違うので細かな情報は言えないのかもしれない。だが、それでもなんだか壁を作られている気がした。
そもそも望が『話し相手になって支えて欲しい』と言ったから八尋は今ここにいるのだ。望が八尋に愚痴を聞いて欲しいともう思っていないなら、八尋は自分がここにいる必要性が半減してしまう。
残る半分は望にオメガミルクを提供することだけになる。
(それだって飽きられたら……。やっぱり他のΩが良いって思われたら……)
八尋は漠然とした不安を感じた。
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